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SNOW ROSE
花園の章
Z
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頂きたく存じます。私は我が身を持って国と王にお仕えしたく存じます故に。」
 ミヒャエルはリカルドの言葉を受け、彼がどれ程の想いを持っているのかを試すことにした。
「リカルド。君はこの国がどうなってほしいのだ?」
「王よ。私はこの国が…いいえ、この大陸全土が戦の無い、差別もない穏やかで活気に満ちた場所にしたいのです。」
「それは…夢か?」
「はい。しかしながら、夢とは実現させるために見るものにございます。故に、私はその夢のためならば、この身を賭しても構いません。」
「リカルドよ。君はその夢を叶えるに足る力は備えているか?」
「いいえ。私一人では到底叶わぬものと存じます。それ故、私は人々の力を借り、国の力を借り、神の力を借りねばなりません。それはこの身故に、生半可な心では得られぬでしょう。私は私の全てを持って、私の夢を成就出来ると信ずる王に仕えたいと願います。」
「私がそうであると、何故に断言出来る?」
「王よ、貴方がそう仰られた故に。」
 問答を通してミヒャエルは、リカルドが何を考え行動したいかを見極めていた。全ての問いに彼は間を置かず率直に答え、それ故にミヒャエルはリカルドが信用に足る者であると確信した。
 しかし、ミヒャエルは最後に自らの確信に布石をするべく、もう一つの問いをリカルドへと投げ掛けた。
「最後に問う。リカルド、私が王の器では無かったと分かった時、私を切り捨てられるか?」
 その問いはリカルドだけでなく、周囲に集う全ての者達を驚かせた。いかな新米の王であるとて、己を切り捨てられるかと問う王はまず居なかろう。だが、この問い掛けには理由がある。
 ミヒャエルは常々、王とは民のためにある存在であると考えていた。彼の父である前国王シュネーベルガーW世はそれを良く理解しており、常に民が何を求めているかを察して国を動かすよう心掛けていた。故に、ミヒャエルにあるこの考え方は、父に多大な影響を受けたものであることは言うまでも無かろう。それは王の器を自身ではなく他者より計られるものであると言うことであり、周囲に常に希望を与えられなくば資質を問われなくてはならない。
 過去、このプレトリウスの国王の中には、王にあるまじき行いをして国を揺るがせた王も存在した。故に、ミヒャエルは自らの足枷として、自分を切り捨てられる人材を傍に置きたかったのである。初心を忘れず、決して高慢にならぬための処置であり、それは戒めでもあった。
「王よ。私は貴方様を信じております。もし貴方様が我々家臣より遠く離れてしまうことがあれば、私は躊躇せずに貴方様を切り捨てるでしょう。しかしながら、そうならぬために我ら十二貴族が居るのです。王よ、我らを信じて頂きたい。」
 リカルドがそう言い終えると、周囲の十二貴族次期当主達はミヒャエルへと礼を取り、自らの態度を明確に伝
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