花園の章
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ーグの姿もあった。皆ミヒャエルを心より祝福し、この国の未来に希望を見い出していたのであった。
皆が宴を各々楽しんでいるとき、ふと誰かが言った。
「あ…あれは!?」
皆がその声に引かれるように窓の外へと視線を向けると、何か雰囲気に違和感を感じて一人がバルコニーへと出てこう叫んだ。
「これは…何と言うことか!」
皆は慌ててバルコニーへと出てみると、そこには今まで見たことのない風景が広がっていたのであった。
その下は丁度前王の妃達が手入れしている花園があるのであるが、皆はその花園の風景に声を出すことすら忘れるほどの驚きを覚えていた。
「白…薔薇が…!」
そこには埋め尽くさんばかりの白薔薇が、まるで未来まで光を射さんと咲き誇っていたのであった。
ミヒャエルはそれを見て直ぐに膝を折り、愛を齎す原初の神へ感謝と畏敬の念を持って祈りを捧げ、皆もそれに倣って神へと深い祈りを捧げたのであった。
さて、戴冠式より十日の後、北の地方では雪がちらほらと舞い始めた頃に、ミヒャエルとアリシアの婚儀の祝賀が行われることとなる。
この時、その様なめでたき場に水を差すような報告がなされたのである。
この日、隣国リチェッリが、このプレトリウス王国に宣戦布告したのである。だが、この章はここで終幕となり、この後の話は時の王、聖リグレットの物語に描かれることとなる。
この章の最後に出てきた白薔薇の園は、現在でも旧プレトリス城に残っている。
だが、現在ではその力は喪われ、一種の薔薇として人々の心を潤しているのである。それは聖エフィーリアが神から与えられた役目を終え、神の御下へと還られたことを意味している。
この一つの書物は、この聖エフィーリアの話によって成り立っており、彼女が愛した者と共に安らけく天にあるまでを描いているとも言えよう。しかし、時の王だけは十年近く続いた「三国大戦」にも干渉しており、そこまでが現在の聖文書大典「時の王の書」の全文に記されている。
だが、それはまた別の者が語ることである。私が語るべきは、ここまでである。
原初の神に栄光が帰されんことを。全ての人々が神によりて平安が齎されんことを。代々に渡り、原初の神が崇められんことを。そして、全ての人々が愛で満たされんことを。
「花園の章」 完
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