花園の章
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なかった。周囲に佇む次期当主らも、ヘルベルトの死を知って片手を胸へとあてて死者への祈りを捧げたのであった。だが、その時であった。
「預言は成就した!」
後ろへと身を退かせていたベルディナータが、皆の前で高らかに言った。それを見て、ミヒャエルも次期当主らも唖然としてベルディナータを見た。
「ベルディナータ…君は一体…。」
ミヒャエルがベルディナータに問い掛けるや、ベルディナータの体がいきなり目映い光に包まれ、皆は慌てて目を覆った。
暫くして恐る恐る目を開くと、皆は自らの目を疑ってしまったのであった。
そこには既にベルディナータの姿はなく、代わりに白い衣を纏った女性が、その栗色の瞳で皆を見ていたからである。
「貴女は…。」
ミヒャエルは何とか気力を振り絞り、その女性へと問い掛けた。その女性は軽く微笑み、ミヒャエルを見詰めて言った。
「私の名はエフィーリア。自然の調和を保つ者、神の言葉を告げる者。」
その女性エフィーリアがそう答えると、次期当主らは慌てて頭を垂れようとしたが、ミヒャエルはそれを止めた。
「皆よ、この御方に頭を垂れてはいけない。この御方にその行為は非礼となるからだ。」
「神に選ばれし者、信仰厚き者よ。汝は義き行いを知っています。故に、私は汝をずっと見守ってきたのだから。」
「ベルディナータが…貴女様だったのですね…。」
ミヒャエルがそう言うと、聖エフィーリアは微笑んで言った。
「そうです。ベルディナータの料理はいかがでしたか?」
「心に残る料理でした。あまり食したことのない、風味豊かな味付けは…懐かしい感じさえ致しました。」
「それは良かった。あれは…私の故郷の味。既に失われて久しいけれど。」
聖エフィーリアは、ミヒャエルの言葉を大変喜ばれたと言う。だが、次には凛とした表情に戻り、周囲に視線を向けた。そうして後、徐に言葉を紡ぎ始めたのであった。
「これより先、汝らの世の最後にして最大の艱難が訪れ、人々は乱れ惑います。この艱難は二つの年を跨いで居座りますが、これを乗り越えてのち、長きに渡り平安が齎されるでしょう。これは原初の神の約束であり、聖文書大典に記されし預言の成就でもあるのです。故に、人々は愛を持って神に感謝と栄光を捧げなさい。しかし、二代先の王は災悪となるでしょう。それはこの大陸全ての王に言えるのです。その後、この世界にある四大陸と七十七の島とは行き来出来る様になり、新たな時代が到来するのです。ですが、私がそれを見ることはありません。私はこの未来への言葉を紡いで後、原初の神の花園へと行かねばならないからです。ですが、汝らが死して後、汝らは必ず私に再び会うこととなりましょう。」
聖エフィーリアはそこまで言うと、そこで言葉を切ってミヒャエルへと視線を向けた。
「選ばれし者よ、汝の心に掛かり
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