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SNOW ROSE
花園の章
Z
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で、最早手の施しようもない程に病に冒されていることは言わずとも解った。今から医師を呼び寄せても、もう助かる見込みは薄いと皆は理解していたのであった。

- こんなとき、ユディが居てくれたなら…。 -

 ミヒャエルは心からそう思った。いかな悪人と言えど、家族は家族なのである。死に逝くのを見ているしか出来ない無力感は、拭っても拭い切れるものではなかった。
「ミヒャエル…我が弟…。私は…お前が国王になることを望んだ。お前はヴィーデウス兄上よりも国を愛し…人々を愛していた。父上や兄上が愛していたのは…貴族だけだった。民など…さして愛してはいなかったのだ…。」
「そんなはずは…」
「いいや…貴族の視線だけが…気になっていたのだ。故に、ここ数十年…貧困に喘ぐ者が何倍にも増えていたのだ…。」
 ミヒャエルも次期当主らも、このヘルベルトの言葉で、この町がある理由が理解出来た様な気がした。この町の造りであれば、この国の大半の民を貧困から救える。ヘルベルトはそのモデルとして、このシュアの町を造り直したのだと…。
「しかし…何故に民を犠牲にし…自らを貶めてまで…!?」
「誰かが悪人であれば…それを皆が知れば…皆は一つになれる…。大方はルドルフの独断だったが…止められなかった私の責任…。あと…アリシアと言ったか…。あの娘は…サミルの町にいる…。」
 ミヒャエルは目を見開いた。ここで彼女の名が出てこようとは、考えてもいなかったからである。
「何故…アリシアを連れ去ったのですか?」
「真意が…知りたかっただけだ…。ミヒャエル…お前はかの娘を…好いておるのだろ…?あの娘は…貴族とは無縁。故に…妃に相応しいか…知りたかったのだ…。」
「そんな…!」
 ミヒャエルは唖然として言葉も出なかった。話の前後から察し、ヘルベルトはミヒャエルに相応しい妃候補を見つけたかったらしいのだ。
 さすがにミヒャエルはどう返して良いか分からなかった。怒り、憎しみ、哀しみ、淋しさ…。ミヒャエルの内には様々な感情が入り交じって、自ら判別することが出来なかった。
「そう…驚くこともなかろう…。ミヒャエル…我が愛しい弟…。お前は貴族の目など…気にするな…。同じ過ちを…繰り返すな…。罪は…全て私が…持って逝くさ…。もう…何も案ずるな…。ミヒャエル…済まなかった…。」
「こんなところで謝らないで下さい!」
「あぁ…お前さえ…傍に居れば良かったんだ…。お前だけ…愛していた…。ただ…ただ…それだけの…ことだったのだ…。だが…終わる…この苦しみも…消える……。」
 そう言うと、ヘルベルトはその瞳を静かに閉じた。それと同時に、彼の体からは力が抜けてだらりとミヒャエルの腕に垂れ下がった。
「兄上…兄上!?」
 ミヒャエルは力なきヘルベルトの体を揺すったが、ヘルベルトはもう何も答えることは
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