花園の章
Z
[15/22]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る。だがミヒャエルはその裏側に、彼が隠し通そうとしている何かを感じ取っていた。
確かに、ミヒャエルは兄であるヘルベルトを憎んでいる。それはどうしようもない感情であり、それを捨て去ることなど出来ようもなかった。
だが反面、家族として過ごした日々を無かったことにすることも出来ず、優しかった兄のことをミヒャエルは思い出していた。
ミヒャエルは元来、王になることなど出来よう筈はなかった。それ以前に、ミヒャエルには王になる気もなかったのであるが、一つ上の兄であるヘルベルトは、そんなミヒャエルを幼少の頃よりずっと可愛がっていた。ミヒャエルに読み書きや算術、植物や天体など多くの学問を教えたのは、他ならぬヘルベルトであった。
第一王子ヴィーデウスは次期国王になるべく別棟に移されて勉学を教えられていたため、ミヒャエルにはあまり会う機会はなかったのである。故に、ミヒャエルにとって兄はヘルベルトであり、幼少時の思い出もヘルベルトとのものが大半であった。
一方、ミヒャエルの母、前国王の第三妃はと言えば、病がちでいつも床に着いていた記憶しかない。今は回復してはいるものの、以前はとても出歩くことなど出来なかった。ヘルベルトとは母親が違うも、この第三王妃であるミヒャエルの母は、我が子を気遣ってくれるヘルベルトを、ミヒャエルと同様に愛していた。
ミヒャエルはあの幼き頃の記憶を思い出し、如何にしてもヘルベルトの内にある思いを聞き出したかった。
「兄上は私が幼い頃、とても優しく聡明な方でした。それなのに…何故この様なことを…?」
「ミヒャエル、それを聞いてどうする?私の手は血に塗れ、魂は夜の闇に染まったのだ。今更だ…。もうあの頃には戻れない。」
「いいえ。兄上、それでも優しかった兄上は確かに居ました。私は聞かなくてはなりません。兄上、貴方は何を苦しんでいたのですか?私には…そう、私にはそれを聞く権利がある。」
「権利…か。」
ヘルベルトは淋しげに微笑んだかと思った刹那、彼はいきなり吐血して倒れ伏してしまったのであった。
「兄上!?」
それは一瞬の出来事であった。ミヒャエルだけでなく、後ろで控えていた次期当主らも目を見開いて驚愕したのであった。
皆は直ぐ様ヘルベルトへと駆け寄り、ミヒャエルは倒れ伏した兄を抱え起こした。
「兄上!貴方は…。」
「もう終わり…そう言った筈だ…。この病は…生まれつきなのだ…。父上は…この様な私を疎んで…近付こうともしなかった…。そんな中にあって…私はお前を…自分と重ねていたのやも知れんな…。」
「どうして…どうして早くに言って下さらなかったのですか!」
「ミヒャエル…お前は大きくなって…家を…城を出て行ってしまったからなぁ…。」
そこまで言うと、ヘルベルトは再び吐血をし、意識も朦朧とし始めた。
その顔は蒼白
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ