花園の章
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つ、リーテ公子ハンスはそう呟いた。
聖グロリア教会は、北皇暦時代にトレーネの森(現シュルスの森)の奥にあったとされる古宗教の教会である。数冊の外典にはその詳細が記されいるが、現在ではその場所は定かではない。六国大戦時に森ごと焼けてしまい、その名は聖文書大典とその外典とに僅かに残るのみとなっている。
しかし、その内装と外装は、現在は廃墟となっているカルツィネ地方の町の教会に、その復元の試みが成された形跡があると言う。
さて、見とれている皆をベルディナータは中へ入るよう促し、皆はそれに従って教会内に移動した。
その中もまた素晴らしい出来であり、天井には聖文書大典から題材を取った聖画が描かれ、壁には十二の聖人が描かれていた。
確かに華やかではあるが、しかし華美になりすぎることはなく、言葉を視覚で理解しやすいように工夫されていた。ここが美術館ではなく、飽くまでも祈りの場であると改めて認識させてくれるものであった。
「やっと…来てくれた。我が弟よ…。」
皆が内装に目を奪われている中、祭壇脇の通路から一人の男が姿を現した。ミヒャエルも次期当主らも、その男へと直ぐ様視線を向けた。
すると、そこには見覚えのある男が悠々と立っていたのであった。
「ヘルベルト…兄上…。」
「ここまで来て、まだ兄上と呼んでくれるのか…。私はミヒャエル、お前を殺そうとまでしたと言うのに…。もう兄と呼ぶに相応しくなかろう。」
ヘルベルトはそう言って自嘲気味に笑うと、間を取ってミヒャエルらの前に歩み寄った。皆はその行動に緊張を走らせたが、ヘルベルトには全く危害を加える様な素振りはなく、剣すら携えてはいなかった。
「そう牽制せずとも、私は何もしない。ま、そうされても仕方ないことではあるがな。だが、ルツェンの一件は私の指示ではない。あれはルドルフが私的に騎士団を動かして起こしたものだ。まさか暴走するとは思いもしなかったが…。」
「兄上…それを信じろと?」
「いや。もはや信じてもらおうとは思わない。終わりは近いからな…。これで良い…。」
ヘルベルトの言葉に、ミヒャエルは何か違和感を感じた。まるで死に逝く者の呟きに聞こえたからである。
ミヒャエルは彼がこの場で裁かれるのだと考えてると思ったが、それも違う様な気がした。曲がりなりにも王族の一員であるヘルベルトを、十二貴族現当主らを召喚せずして罰することは出来ず、ヘルベルトもそれを知っている筈だからである。にも関わらず、ヘルベルトは「終わり」という言葉を口にし、ここで何一つ反抗する意思を持っていないことを明確に表してしるのである。
「兄上、一体何を考えているのですか…?」
ミヒャエルは、目の前に佇むだけの兄に問い掛けた。目の前に立つ者は民の敵であり国への反逆者、そして愛した者を殺した憎むべき相手であ
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