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SNOW ROSE
花園の章
Z
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!御顔を知らぬとは申せ、平に御容赦下さいませ!」
 目の前の男がそう言って礼を取ると、周囲の民も皆ミヒャエルへと礼を取ったのであった。
「何故、私が王になったことを知っているのだ?」
 人々の態度に困惑し、ミヒャエルは男へと問い掛けた。すると、男は顔を下げたまま、恐る恐るその問い掛けに答えた。
「ヘルベルト様が皆に告げられたので御座います。我が弟、ミヒャエルが国王となったと。その時、ヘルベルト様は民に勿体なくも祝賀の席を設けて下さり、それは大層なお喜びようであられました。」
「兄上が…私が王になったことを喜んだ…だと?」
「はい。」
 この答えにミヒャエルはおろか、次期当主達も唖然とする他なかった。ミヒャエルの傍らに居たウィンネ公子クレメンスは、囁く様にミヒャエルへと問い掛けた。
「ヘルベルト王子は、貴方様を暗殺しようとしていたと…そう聞いておりますが…。」
「ああ…、何度も殺されかけた。一度は、自ら剣を取って赴いて来たこともあった程なのだが…。」
 だが、その言葉に答えられる者は、その場には一人も居なかった。答えを知っているのはただ一人、ヘルベルト自身に他ならない。
 ミヒャエルは考えていた。全てがおかしい…。ここまでの出来事を総合して考えても、やはり全く辻褄が合わないと…。
「殺そうと画策した本人が…殺そうとした相手を祝すなど…。」
 本来ならば有り得ないはずである。だが、目の前の民達は、ヘルベルトがミヒャエルの王位継承を喜んだと言っている。それも祝賀の席まで設けてだ。
 ヘルベルトの行動の矛盾は、一体どこから来ているのであろうか?
「ベルディナータ、兄上は今はどこへ?」
「彼は中央の教会へおいでです。」
「あの兄上が…教会に?」
「あの教会はヘルベルト様自らが設計され、それをこの町の民が造り上げたもの。」
「兄上が教会を…!?」
 もう話が分からない。ヘルベルトは教会嫌いで、無神論で通していた。それがどのような心境の変化か、この町に教会を建て、人々が住みやすいように町ごと土地を改革している。これが生半可なことではなし得ないことだとは、ミヒャエルは頭の中では理解しているものの、兄であるへルベルトの真意を掴みかね、全てを鵜呑みにして信ずることなど出来なかった。故に、ミヒャエルはベルディナータに案内を頼み、次期当主らと共にその教会へと向かったのであった。

 教会はこの町の規模からみれば、意外と大きかった。その外壁は白く、また屋根は蒼く塗られた美しい外観を持っており、教会と言うよりも、寧ろ大聖堂を縮小したような造りをしていた。壁には聖人などが浮き彫りにされ、それらを植物の浮き彫りで囲った美しい外壁は、ここへ来たミヒャエルらを驚嘆させた。
「これは…聖文書大典に記されている、聖グロリア教会の様だ…。」
 嘆息しつ
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