花園の章
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が居りまして、館の書庫へ収められていたものを読んだのです。そこにはこれと同じ仕組みの水路の造り方も記してあったかと…。」
「だがハンス。それがどうしてこの町で実践されているのだ?以前にリーテ地方を訪れたこともあるが、このような水路は無かったと記憶しているが。」
「はい。我が地方は、その昔一つの小国でした。六国戦争の際、国は壊滅的な打撃を受け、整備されていた水路はおろか、古い造りの建造物や橋なども破壊され、復元不可能になったそうです。それを造った技術者が亡くなってしまい、資料が散逸してしまったためと聞いております。ですが、これは星暦の終わりの話であって、ここでそれが再現されているのは私にも理解しかねます。」
ミヒャエルはルートヴィヒの話を聞き、とある聖人の話を思い出していた。それは聖シュカの話である。
現在のリーテ地方は以前、リューヴェンと言う小さな王国であった。それは星暦時代の話であって、未だ国や王が星の動きに合わせて全てを仕切っていた時代の話。
聖シュカとは最後の乙女にして、聖エフィーリア以前の大地を司る女神とも言われている。彼女は聖人の中でも特異な生涯で、リューヴェン国王に見初められて妃となっている。彼女は数人の子供をもうけているが、その一人の息子が建築や水路などの設計理論に多大な功績を残していることはよく知られているところである。しかし、実際彼が残した書物は殆んど無く、全て散逸してしまったのである。
しかし、彼はリューヴェンだけでなく、他の国や地域でも仕事をしており、建築家や農地開拓者などはそこから勉強しているという。ミヒャエルはそれを思い出す傍ら、トリスで出会った大工職人ハッシュの顔を思い浮かべていたのであった。
「怒っているだろうな…。」
「はい?」
「いや…何でもない。とにかく先に進もう。」
ミヒャエルはそう言うと、人々が集まる一角へと向かったのであった。
ミヒャエルは民を恐れさせぬため次期当主達のみを連れ、他は外へと待たせてあった。あの大人数でぞろぞろ入れば、さすがにヘルベルトに気付かれてしまうのは言うまでもなかろう。人々はそんなミヒャエルらを不思議そうに見ていたが、人々は決してその手を休めることはなく、皆仕事をこなしながら何事かと彼らを観察していたのであった。
「何かご用ですか?」
暫くすると、その中より一人の男性が姿を現してミヒャエルへと問い掛けた。いかにも町の住人と言った風情であったが、服装は仕事着にしては良い生地であつらわれており、彼がこの現場の指揮官であると考え、ミヒャエルは彼に問い掛けたのであった。
「私の名はミヒャエルと言う。この町にヘルベルト王子が来ていると聞いたのだが。」
ミヒャエルがそこまで言うと、目の前の男は蒼くなり、働く人々の手が止まった。
「ご無礼を御許し下さい、国王陛下
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