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SNOW ROSE
花園の章
Z
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に、王都からここまでに何の襲撃もなかった。中には、ヘルベルトが任されていた領地も含まれていたにも関わらず…である。それどころか、積極的に道を明け渡しさえしたのである。
 だが、今までのヘルベルトの行いを、ここで帳消しにするにはもう遅過ぎていると言えた。いくら争う意思が無くとも、ヘルベルトは多くの民を苦しめ、その上、人命も数多く奪っているのだから…。
「ベルディナータ、君は一体何者なのだ?何故に私へ多くの助言を与えた?」
 ミヒャエルは鋭い目付きでベルディナータを見据えた。しかし、ベルディナータはさも可笑しげに頭を下げてこう言ったのであった。
「私は私。貴方にとっては友であり、そしてただの料理人。」
「それだけではないだろう?」
「それは…もう少ししたら分かります。」
 そう言うと、ベルディナータは町へ入る門を開いた。
 シュアには人数人分ほどの高さの防壁があり、そこに小さな門が作られていたのである。何故にこの様な高い防壁を作ったかは、中の様子で理解出来た。そこには今まで見たこともないような光景が広がっていたのである。
「…これは…!?」
 王都へ入った時も驚かされたが、このシュアでの光景はそれ以上のものであった。そこはどの町や村…いや、王都よりも整理されており、何故にこの小さな町に高い防壁が存在したのかが分かったのであった。この光景を隠しておきたかったからである。
 そこには理論的に水路が通され、効率良く作物が育てられるように工夫が凝らされていた。その一面には収穫を待つ黄金の穂が風に揺れており、その先を見ると、町の中心付近には城ではなく、小柄ではあるが立派な教会が建てられていたのであった。
 どうやらその教会を中心に町が展開されているようで、麦畑の他には葡萄や李などの果樹園や、野菜を中心とした畑などが広がっていたのであった。それらは日が陰らぬよう予め計算して作ったようで、どれだけ考えを尽くし手を尽くして造り上げたか解るものであった。その一角では未だ町の整備が行われており、人々は畑や町を動き回っていた。
 ミヒャエルらは暫く立ち尽くしていたが、ベルディナータに先導されて町の中へと入って行った。近くで見れば見るほど、その町は細部に至るまで考え抜かれて作られており、ミヒャエルは感心するばかりであった。
「たが…何故にこのような町を…。」
「そうですね…。ですが、これは素晴らしい設計です。少ない水でも充分に作物を育てられるようになっているばかりか、遠くまで行かずともこの水路で水を確保出来るため、働く人々にゆとりが出来ます。この設計…どこか書物で読んだことがあるのですが…。」
 ミヒャエルの言葉に返したのは、リーテ地方次期当主ハンス・ルートヴィヒ・フォン・リューヴェンであった。
「確か…祖先の中に水路や農地開拓などに関わる書を残した者
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