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SNOW ROSE
花園の章
Y
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笑みが浮かんでおり、微塵の殺気も感じさせなかった。街の炎でぼんやりと照されたその顔を見て、ミヒャエルは今更ながらに暗殺者の真の恐ろしさを実感させられたのであった。
 遠くからは未だ、炎の燃え上がる音と人々の逃げ惑う声が響き渡っていた。その中で、二人は互いに牽制しあったまま微動だにしなかった。だが、一迅の風が吹き抜けた殺那、ミヒャエルはルドルフへと踏み込んだ。ミヒャエルの剣はルドルフにはかするともなく空を舞い、それはミヒャエルを動転させた。音もなく躱されたのである。
「本物の戦いを知らないようですね。」
 ルドルフは体勢を立て直したミヒャエルに冷やかな目線を送り、今度はルドルフから踏み込んできたのであった。幾度も剣が交差する中、ルドルフが如何に強いかをミヒャエルは思い知らされ、防ぐことしか出来ぬ自分の未熟さに憤りを覚えた。
「そろそろこの様な茶番劇に幕を降ろしましょう。」
 そう言ってルドルフは、今までにない鋭い表情を見せた。ミヒャエルはその顔を見て、それまでにない悪寒を感じたのであった。ルドルフのそれは本気を出すと言うことであり、それまでは大した力を出していなかったと言うことなのである。故に、ミヒャエルは自らの命の危うさを、真に実感したのであった。
「死んで頂きます…。」
 そう呟く様に言うや、ルドルフは動いた。ミヒャエルは何とか応戦しようと剣を構えたが、その刹那、ミヒャエルは腹部に激烈な痛みを覚えたのであった。
「…!」
 あまりの痛みに、ミヒャエルはその場へ倒れ込んだ。
「言ったではありませんか…。私を倒せるとは思えませんとね。では、これにてお別れです。」
 ルドルフはそう言って、倒れ込んだミヒャエルへと止めを刺そうと剣を降り下ろした。だが、それは叶うことはなかったのであった。ルドルフの剣を、何者かが防いだのである。
「誰だ!」
 ルドルフは驚きのあまり目を見開いて防いだ者を見た。それはとある騎士であった。その者は長い黒髪と袖の無い外套を靡かせて、悠然と立っていたのであった。
 その者は白銀の鎧を身に付けていたが、この国でそれを身に付けられるのはミヒャエルだけのはずであった。何故ならば、それは聖騎士の鎧であったからである。しかし、今のルドルフに、それを見極める余裕など無かった。
「名乗る必要もあるまい。今度は私が相手になろう。」
「面白い…。」
 そう言うや、ルドルフは瞬時に間合いを取った。ここで放っておいたとしても、ミヒャエルの死は確実だと思ったからである。そしてルドルフはその目に狂気を宿し、相手の男を見据えて剣を構え直しながら言った。
「お前は貴族か?」
「いや、私は貴族ではない。原初の神に仕える者だ。」
「何が神だ…。神などこの世に存在せず、貴族は自らの懐を肥やすことしか頭に無い。無責任に民へと負担を押し付け
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