花園の章
Y
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な場所を巡ったのである。
しかし、敵はさして時間の掛からぬうちに見付けることが出来た。いや、その男はミヒャエルの前へと不敵な笑をみせながら歩み寄ってきたのである。
「貴様が街へ火を放ったのか!」
ミヒャエルはその男を睨み付けながら問った。そこに立っていたのは、ミヒャエルの見知った顔であった。
「お久しぶりです、ミヒャエル王子。死んだとばかり思っておりましたが、こうしてのうのうと生きて居られたとは。恐縮ですが、貴方様には死んで頂きたく存じます。故に、貴方様を炙り出すため、少しばかり明るくさせて頂きました。」
飄々と語るこの男は、碧桜騎士団団長ルドルフ・シヒトである。
この男、数年続いていたヨハネス公国とモルヴェリ帝国の<時の砂漠>を廻る戦の中で活躍し、それが収まった際にこの国へと流れて来たのであった。
だが、この男の素性は不透明であり、名すら偽名だとの噂である。故に、ルドルフが碧桜騎士団の長に抜擢された時、ヘルベルトの家臣の一部が猛反対したのであるが、その者達が暗殺されて今の地位を得たと言われている。
「貴様が何故にここへ居るのだ?貴様はヘルベルト兄上直属の部下の一人。この様な場所で悠長に火遊びをしている暇はないはず。」
「ヘルベルト様…ねぇ…。確かに、今は部下ですよ。ま、貴方様に消えて頂きさえすれば、あの方も用済ですが。」
「どういう…意味だ…?」
ミヒャエルはルドルフを鋭く睨み付けながら問うと、ルドルフはニタリと嫌な笑みを溢して返した。
「死に逝く者に語ることはない…と言いたいところですが、良いでしょう。実は、さる御方がこの国をご所望でね。私はその御方に雇われてこの国へと入ったんですよ。最初は厄介なものでした。王は賢明な方で、第一王子もとても優秀で聡明な方だ。その上ミヒャエル王子、貴方は民に愛されている上に聖騎士の称号まである始末。使えるのは第二王子位なもので、ここまで来るのにえらく苦労致しました。」
ルドルフの、まるで喜劇の台本でも読むような語り口は、前にいるミヒャエルを不快にさせるには充分であった。
「貴様…民の命を何だと思っている…!」
「民…ですか?あれは勝手に増えてゆくではありませんか。たかが百や二百死んだとて、直ぐに元に戻ります。何をお怒りですか?ミヒャエル殿下。」
本当に分からぬと言った風な態度に、ミヒャエルの怒りは頂点に達した。ミヒャエルは剣を抜き払い、その切っ先をルドルフへ怒りと共に向けたのであった。
「貴様を生かしておけば、この国に憂いが残る。」
「貴方様に私を倒せるとは思えませんが?まぁ…遅かれ早かれ貴方様には消えて頂くのですから、ここで死んで頂ければ好都合と言うものでしょう。尤も、そのつもりで来たんですがね。」
ルドルフはそう言いながら自らの剣を抜いた。彼の顔には相変わらず嫌な
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