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SNOW ROSE
花園の章
Y
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のかい?」
「はい、薬草入りです。家から沢山持ってきてましたから。」
 そう言いながら、アリシアはミヒャエルへとスープを差し出した。それはあの時…ミヒャエルが昏睡状態から覚めた時に作ってくれたスープと同じ香りがした。
「やはり旨い。アリシア、君は良い奥方になれそうだ。」
「お世辞を言っても、何にも出ませんわよ?」
 二人は笑った。ささやかな至福ではあったが、二人の会話は周囲に集まる人々の心をも温かくさせたと言う。
 国は一人の男のために乱れ、それを皆が諫めに行こうと言う時、誰しも心には一抹の不安があったであろう。しかし、こういった一時の至福は、その刺々しく渇いた心に潤いを与えたのである。故に、人々はこの様な他愛ない会話に、未来への希望を見い出していたのであった。
 それは偶然の産物であったのか、はたまた必然だったのかは分からない。だが、これが人々に光を与えたことは確かである。ここでは身分など、大して意味を持ち合わせてはいなかったのであった。

 その夜、皆はルツェンにある大きな公園へテントを張り、各々そこへ入って休んでいた。街中でも見張りを絶やすことはなかったのであるが、真夜中に公園内ではなく、街中より悲鳴が上がったのであった。
「何事だっ!?」
 ミヒャエルとアンドレアスは飛び起きて、直ぐに剣を持って外へ出た。皆も同じように外へ出てみると、街の端にちらちらと炎が見てとれ、空を紅く染め上げていたのであった。
「ここへ来て襲撃だと!?」
 悲鳴はルツェンの民のものであった。
 周囲は徐々に混乱の兆候を見せ始めていたが、ミヒャエルはアンドレアスと十二貴族次期当主達に命令し、冷静な対処に努めた。彼らが慌てふためけば、混乱は酷くなり敵の思う壷と言うものである。
 しかし、ミヒャエルは内心気が気ではなかった。アリシアのことが心配だったのである。今の状況が頭の中でフォルスタと重なり、いつしかアリシアとマーガレットの姿が記憶の中で重なった。
「ミヒャエル王子!今は考え事をしている場合ではありません!」
 見ると、そこにはベルディナータがミヒャエルを叱咤していた。
 燃え盛る炎は見る間にルツェンの街を覆い始めており、その中で人々は右往左往していたのであった。ミヒャエルは我に返り、直ぐ様皆に指示を与えた。
 先ず白薔薇騎士団を三班に分割し、同じく兵士も三つに分けた。その一つには火を消し止めることを命じ、指揮官にアンドレアスを配した。また、二つ目の班には賊を見つけ出すことと、一般人を安全な場所へと誘導することを命じ、それには二人の次期当主を指揮官とした。残る者は逃げてきた民と、物資を運んできた者達を守るよう命じ、そこには残りの次期当主達に任せることとしたのであった。
 ミヒャエルは命じ終えると号令を掛けて向かわせ、自らは単独で敵の潜みそう
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