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SNOW ROSE
花園の章
Y
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未だ気付いてはいなかった。
「アンドレアス、俺は見回りに行ってくる。そっちで食事を摂るから、次期当主方にはそう伝えてくれ。」
「分かったが、あまり遅くなるなよ?取り敢えず王子なんだからな。」
「取り敢えずとは耳が痛いな。分かってるよ。」
 ミヒャエルはアンドレアスにそう言うと、一人で見回りに出た。
 これだけの人数ともなれば、何の争いもなく進める訳ではない。故に、ミヒャエル、アンドレアス、そして白薔薇騎士団達は順に、休憩の度に見回りをしていたのであった。
 ミヒャエルはこの時二度目であったが、ここへきてやっと物資を運んでいた一般の民の元へへと足を運べたのであった。
 だが、運が良いのか悪いのか、ミヒャエルはその一人を多くの人々の中より見い出してしまったのである。
「アリシア…アリシアじゃないか!?」
 ミヒャエルが見い出したのは間違いなく、ブルーメで彼を懸命に看病していたアリシア・ウォーレンであった。
 アリシアは最初驚いた表情を見せたが、直ぐに礼を取って挨拶した。
「ミヒャエル王子、お久しゅう御座います。」
 アリシアは以前よりも幾分細くなっていたが、その瞳の輝きは失われることなく健在であり、ミヒャエルはそんなアリシアを見て胸が傷んだ。
「アリシア、君は俺の命の恩人だ。畏まる必要はない。」
「王子、貴方様は君主になられるべきお方。礼を欠くことなど出来ません。」
 アリシアはそこまで言って顔を上げると、直ぐに微笑んで言葉を付け足した。
「でも、元気そうで良かったですわ。ミックさん。」
 最初の言葉に少し淋しさを感じたミヒャエルであったが、この言葉にミヒャエルは笑みを浮かべたのであった。
「しかし、君が何故この様な場所へ居るんだ?」
「ブルーメがヘルベルト王子の命で制圧された時、一部の人々が兵に逆らって暴動を起こしたんです。その時、兵は街に火を放ったため、大半の家が焼け落ちてしまったんです私の家は助かりましたけど、今は焼け落ちた家の人々に部屋を貸してますので、私は街を出てミューアに住まう叔母の家を訪ねようと思っていたんです。けど…途中でこの軍行の話を聞き付けて、ならばこちらへと思って参ったのです。」
「両親は健在か?」
「はい。もうピンピンしてますわ。母は畑で父は漁をしてますので、毎日人々のために尽くしてます。私が一人のんびりしている訳には行きませんでしょ?」
 アリシアはそう言って笑っていたが、彼女は負担にならぬよう家を出たことは、ミヒャエルには直ぐに分かった。
 少なくとも、ここでは食料に困ることはなく、いざとなれば兵も居るので安心と言える。その点でミヒャエルは安堵していたのであった。
「そうか。では、君が作ってくれた昼食を頂くとしよう。」
「今日、私が担当したのはスープですわ。」
「あの時作ってくれたも
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