花園の章
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めていた。
兵士達にも奇跡の白き薔薇の話は広まっており、彼等は皆原初の神を讃えつつ仕事に従事していた。その光景は、戦いに赴くと言うより寧ろ、まるで巡礼へと旅立つ支度をしているようであったと伝えられている。
だが、その様な中に一つの訃報がミヒャエルへと届けられたのであった。それは偵察に出ていたベルディナータより報告された。
「父上が…崩御されただと…。」
それはミヒャエルだけでなく、そこに集められていた十二貴族次期当主達にも動揺を広げた。
しかし、その様なミヒャエルへベルディナータは叱咤を投げ掛けた。
「心を揺らしている時ではありません。我々は正しき路を歩んで行かねばなりません。ここで立ち止まって嘆いている余裕は無いのです。」
「そうだな…。で、ベルディナータ。父上は苦しまれたのか?」
「いいえ。聞くところによれば、王は妃様や家臣に見守られての安らいだ死だったそうです。ただ…」
「何だ?」
ベルディナータが怪訝な顔をして話を中断したのでミヒャエルは不審に思って問うと、ベルディナータは話を先へと進めた。
「ただ、王が亡くなられたのが王城の私室だったそうで…。」
「何だと?幽閉されていたのではなかったのか?」
「その筈ですが、いつ幽閉が解かれたのかは分かっておりません。私が話を出来たのは、塔の別室へ幽閉されていたベッツェン公でしたので。彼の話に依れば、数日前より見張りが薄くなり、その頃には私室へ戻っていたのではないかと。王が崩御なされる時には、ベッツェン公も傍に着くことを許されたそうですが、今は王城の別室に軟禁状態となっておりますが、実状では完全に幽閉は解かれているようです。」
「どういうことだ…?」
それは大いに謎であった。
ミヒャエルは当初、兄であるヘルベルトは王位を狙っているのだと考えていた。しかし、それとは少しばかり違うのではと思えてきたのであった。
未だ分かっていないヘルベルトの統括している村や街に至っても、民が苦しめられている様子はないという。
「だったら…何故にあの様なことを…。」
ミヒャエルは今までのことを思い返して問ってみたが、それは本人に直接聞くしかあるまいと考え、その場では考えることをやめたのであった。それ以上考えても仕方無いと分かっていたからである。故に、ミヒャエルは皆に真実を語り、不安に陥らぬように鼓舞し続けたのであった。
その夜、ここへ集いし全ての者達に晩餐が振る舞われた。皆はそれで英気を養い、翌日には王都へ向けて出発するのである。その数、三百五十と言われ、予定通り翌日の昼前にはミヒャエルを先頭に出発した。
ミヒャエルの後にはアンドレアスと十二貴族次期当主達が続き、その後には白銀の鎧を身に纏った二十三人の騎士達が続いていた。この騎士達がミヒャエルの手兵「白薔薇騎士団」である
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