花園の章
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ま静観を続ける訳にも行きますまい。大公亡き今、早々に手を打つべきかと…。」
「だが…こちらの兵力はざっと見積って二百五十が限度。各地の兵力をこちらに回せば均衡を揺るがしかねぬし、これで如何になさるおつもりか?」
「リカルド殿は少々考え過ぎだ。要は王をお救い出来れば収まることだ。戦を仕掛ける必要は無いでしょう。」
「いや、それは相手に気取られたら終わりだ。それこそ碧桜騎士団暗殺部隊を未然に防ぐことなど、今の我々にどれ程の手立てがあると?ヘルベルト王子を討つ覚悟で挑まねば、この状況を打破出来るとは考えられないが…。」
「そう言われるがティード殿、王都には約二千の兵が居るのだ。それをヘルベルト王子が動かせたとなれば、王都は間違いなく火の海になるだろう。そうなる前に、こちらから手を打っておかねば、王の救出どころの話ではなくなる。」
次期当主達は口々に意見を出しあってはいるものの、一向に具体案が出る気配はなかった。
その様な最中、急に扉が開かれて、そこから一人の男が入って来たのであった。あまりに急だったため、皆は話すことを止めて男に視線を向けた。
そこに立っていたのは、途中レヴィン夫妻と別れて知人の元へ赴いていたアンドレアスであった。
「ご無礼を承知で参らせて頂きました。皆様、早々に王都へ出発する手配をなさって頂きたい。」
そこにあった者達はあまりのことに、アンドレアスの言ったことの意味を理解出来ないでいた。それを解ってか、アンドレアスは直ぐに言葉を足したのであった。
「我が師にしてヴェヒマル大聖堂前法王カール・フリードリヒ・ファッツェ殿にお力添えを頂けることとなり、現法王リチャード・ファイソン殿も異論は無いそうです。故に、王国全ての大聖堂と教会は、全て我々に力を貸してくれることになりました。我々はその意思を表すため、直ちに行動をせねばなりません。」
このアンドレアスの言葉に、この場に集いし者達は皆、呆気に取られてしまったのであった。
二大宗教の総本山が国のために動くのは、歴史上稀と言わざるを得ない。元来、大聖堂や教会は国政に左右されず、逆に国政を左右することもない。互い干渉しないことは、過去二つの大戦の後に暗黙の決め事となっていた。宗教と国政が争ったり力を結んだりすれば、それこそ国を潰し兼ねないからである。
だが、それを解って尚力添えをすると言うことは、宗教そのものが国の行く先を憂いていると言うことなのである。
「神は道を直くするよう命ぜられたのだ。我々はそれに従わねばなるまい。」
皆が互いに話し合っている中で、ミヒャエルは凛として言い切った。その手には一輪の白き薔薇が今も、未だ美しく咲き誇っていたのであった。
その日の夕刻より、十二貴族次期当主達とアンドレアスは兵を集め、翌日の昼前までには出発出来るよう準備を始
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