花園の章
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と、会議のために集まっている十二貴族次期当主達の元へと向かった。レヴィン夫妻と二人から聞いた話、そしてアンドレアスが夫妻に託した書簡について彼等に話すためである。
ミヒャエルが扉を開くと、皆は直ぐにミヒャエルへと視線を向け、直ぐに立ち上がって礼を取った。ミヒャエルは皆を座らせると、自らは皆の前に赴いて静かに話始めた。
先ずはアケシュで起きたシュテルツ大公の死と奇跡のことから始め、聖ジョージと聖ケインが齎した白薔薇を皆の前に翳した。皆はそれを見て驚き惑い、そしてミヒャエル同様、皆は原初の神へと祈りを捧げたのであった。
「この時に、聖なる奇跡は齎された。我らは神より離れていたにも関わらず、原初の神は我等を許し、愛してくれるというのか…。」
沈黙を破って言葉を紡いだのは、ウィンネ公子クレメンス・フォン・ケーネスであった。ウィンネ地方には聖ヴァール大聖堂があるが、ケーネス家はあまり関わりを持ってはいなかった。現当主ヘルムートは宗教を嫌う傾向があり、神や奇跡を全く信じてはいなかったのである。故に、「神より離れている」と言ったのであった。しかし、それを聞いた皆はその言葉に思いを置き、暫しこの神より離れし世代を振り返ったのであった。
皆、多かれ少なかれ、神の言葉を受け入れなかったり聖人を謗ったりする者もいた。それ故、彼等はミヒャエルの翳した白き薔薇に畏れを抱き、また逆に神よりの深い愛を感じることも出来たのであった。
だが、それは高名なレヴィン夫妻が語ったという話だからに他ならない。夫妻は直接的ではないにしろ、聖人の家系から出ている者らである。それはここに集いし十二貴族次期当主達も同じであり、特に音楽に関わっていたリューヴェン家のハンス・ルートヴィヒは、自らの家系が音楽を絶やしてしまったことを悔やんでいた。それは神への捧げ物を止めてしまったからに他ならず、神より遠く離れていたことの証と思えていたのであった。
暫し祈りを捧げて後、ミヒャエルは皆が落ち着いたところを見計らって続きを語りだし、シュテルツ大公がどの様な振る舞いをし…どの様に死に至ったかを告げた。
事実を言えば、ここに集まりし次期当主達の真なる敵はシュテルツ大公と言え、皆はそれを聞いて目を丸くしていた。この会議で話し合われていたのは、このシュテルツ大公のことだったのである。
彼がヘルベルト王子の権力を利用して税を多く徴収し、それにより軍備を強化していたことは分かっていたことである。だが彼の亡き今、ヘルベルトだけでは手兵たる碧桜騎士団しか動かせぬ状態になっていると考えられ、十二貴族次期当主達はそれを踏まえて意見を出しあい始めた。
「しかし、あの碧桜騎士団をどう潰すと言うのだ?大公の軍隊も未だ三分の一が王都にある。迂濶には手を出せんだろう。」
「ジェレミー殿。そうは申されるが、このま
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