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SNOW ROSE
花園の章
Y
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ン公を抜かした十二貴族からは承認証書は届いており、ベッツェン公の息子リカルドは、幽閉中の父に代わって承認証書は発行済みであった。故に、今のミヒャエルは、国王としての権力を行使することを許されたのである。
「この俺が…国王に…。」
 ミヒャエルの心には、様々な想いが駆け抜けていった。何年も旅を続け、その間に多くの人々と接してきた。決して良いことばかりではないにしろ、彼はこの国が好きであった。
 それ故、ミヒャエルは集いし人々に振り返り、凛とした声で高らかに宣言したのであった。
「皆よ、聞いてほしい。今は苦難の時であり、この国は混迷している。しかし、我々は信仰、慈愛、正義を持ってこの場に集ったのだ。この先、決して楽な道を歩める訳ではない。だが、私は王として誓おう。この国を平安で満たし、愛を持って王権を行使することを。」
 ミヒャエルの言葉に、人々は暫くの後に歓声を上げて答えた。しかし、ミヒャエルはその歓声を手で制し、再び言葉を紡いだのであった。
「私は未だ未熟者だ。それ故に、私は多くの人々に助けを乞わねばならない。都へ向け歩み行くこの時さえ、私は友の力を借り、伯父の力を借り、民の力を借り、そして神の御力を借りてここに立っている。人々よ、この様な私にこの先も力を借してくれるか?」
 ミヒャエルがそこまで言い終えると、今まで以上の歓声にて人々は答えたのであった。それは新たな王への激励であり、それはまた希望でもあった。
 その歓声の中、十二貴族次期当主達はミヒャエルの周りに集い、新たなる王へと正式な礼を取って自分の主であることを承認したのであった。
「ファッツェ殿、ここは頼みました。我らは未来のため、王都へと急ぎます。」
「案ずる必要は御座いません。我等は成すべきことを成すだけ。我が持てる全ての行いを致しましょう。」
「感謝する。原初の神に栄光のあらんことを。」
 そうファッツェに言うと、ミヒャエルは再び人々へと振り返り、こう叫んだのであった。
「神は我らと共にあり!義を持って正すため、我らは歩み行こう!」
 人々はそれを聞き大歓声を上げ、そのまま王都へと歩み始めたのであった。

 時は王暦五七九年秋の終わり。告げられし第一の艱難が終ろうとしていた。
 空はどこまでも蒼く広がり、心地好い風が人々の心に清らかな力を与えていた。それは、まるで神からの祝福にも感じられ、新たなる王を頂いた人々の胸には、真新しい希望が芽生えていたのであった。




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