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SNOW ROSE
花園の章
Y
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ルは刺されたと言うが、彼らが来た時、ミヒャエルからは一滴の血も流されていなかったのである。しかし、よく見れば着衣に裂け目があり、それは剣に貫かれた時に出来るものと似ていた。これをどう解釈すれば良いのか、クラウディオは思案に暮れたのであった。
 暫くするとミヒャエルは、何かを思い出したかのようにルドルフに会ったところからを順を追って語りだした。
「俺は…ルドルフと話をし、彼が国の元凶になると判断を下して剣を抜いた。ルドルフも剣を抜き、互いに剣を交えた。だが、俺はルドルフに腹部を刺されて倒れてしまった…。止めを刺そうとしたルドルフを、一人の騎士が現れて阻止してくれた…。ルドルフは確か…時の王と…。」
「時の王…リグレット…!」
 クラウディオはその名に衝撃を受けた。一般の聖人達とは違い、時の王は神より直接加護を受けた神の代理者である。故に、クラウディオはミヒャエルの語ったことや、死せしルドルフのことも理解出来たのであった。それは奇跡と言うしかなく、彼はそれを受け入れるだけの信仰心があった。
 暫くすると空は白み始め、その頃には街の火も大半は鎮火していた。ルドルフが死したことにより、碧桜騎士団はこの街から離れており、それ以上被害が大きくなることはなかった。
 とは申しても、全くの無傷と言うわけには行かず、この火災で兵士四十七名が崩れ落ちた建物の下敷きとなって亡くなった。皆、民を守ることに全力を尽くしたための結果である。だが、街の民も含めれば死者は百名を超え、そのことに皆は激しい怒りを覚えたのであった。
「民を犠牲にするとは…。」
 消火を指揮していたアンドレアスは、あまりのことに唇を噛み締めた。
 彼は、ヘルベルトが国の民に直接被害を及ぼしたことに強い憤りを感じていた。それは無論、ここに集いし皆が感じていることであり、十二貴族次期当主達もまた、この様な惨事が再び起こらぬよう早々に終止符を打たねばならぬと口々に言ったのであった。
 ミヒャエルは新しく張った天幕に入り、そこで兵士より被害状況の報告を聞いていた。そこにはアンドレアスと十二貴族次期当主達、そしてルツェンの街長クラウス・ヴィントールも訪れていた。
 だが、ミヒャエルはその報告の最後に出た名前に、表情を強張らせた。最後に伝えられたのは行方不明者であり、それは十一人居たが、その中にアリシアの名があったのである。
「身元不明の遺体は全て男性であります。女性の行方不明者は彼女一人で、只今捜索しております。」
 ミヒャエルは嫌な予感がした。アリシアの性格から言って、この様な時に逃げ隠れするとは考えられない。それに加え遺体が無いと言うことは、何者かに連れ去られた可能性が高いと考えたのである。
「民一人のために時を割いている余裕はない。このまま動ける者を集め、直ぐにでも出立すべきです。後のこと
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