花園の章
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、自らはそれが権利だと言わんばかりに横柄に振舞う姿は、まるで妖魔だ。」
そう言うルドルフの顔には、また新たな表情が浮かび上がっていた。それは憎悪であった。
しかし、それだけではなかった。意識の薄れ逝く中、ミヒャエルはルドルフの顔を見て感じたことは、その中に悲痛な叫びがあったと言うことである。だがそのミヒャエルは、その後直ぐ、深き闇の中へとその意識を沈めて逝ってしまったのであった。
「やっと死んだか。」
不敵な笑みを見せてルドルフは言った。だが、目の前の男はそれに動じることなく、ただルドルフを見据えているだけであり、それを見たルドルフは苛立ちをつのらせた。
「なぜ何も言わない。お前は王子を救いに来たのではないのか!?」
「ミヒャエルは既に救われている。彼の者は神に選ばれし王故に。時が満つるまで死することはない。」
この男の言葉にルドルフは笑い出し、そして言ったのであった。
「神に選ばれただと?なんと馬鹿なことを!神は私の妻を見殺しにしておいて、この様な青二才を選んだと言うのか?そうであれば、人の魂に上下を付けているのは神ではないか!何が神だ!信仰など何の価値もないがらくただ!神が居ると言うなら我が妻を返せ!役立たずな神の信奉者よ!」
途中より怒りを露にしたルドルフの言葉に、男は冷静な表情のまま淡々と答えた。
「神の御決めになったことは揺らぐことなし。だが、汝の妻は今、神の御下にある。これ以上何を望むと言うのか。それ故に、我は汝を汝の妻の元へ送ろう。そして、世に生まれ出ることの無かった娘の元へ…。」
「娘…だと…?妻は…身籠っていたのか…?」
男の言葉に、ルドルフは唖然とした。彼の妻は、彼が戦に出て直ぐ、その戦に巻き込まれて死んだのだ。無論、ルドルフは妻が身籠っていたことなど知らなかった。故に、この男の言葉が真実なのかそうでないのかさえ、最早知る由も無かった。
「お前は一体…何者なんだ…?」
「我が名はリグレット。時を司る者、生と死を見守る者、神を讃えし者である。」
「時の王…!」
如何なルドルフとて、その名に驚かない筈は無かった。リーテ教最高の聖人であり、ヴァイス教聖人エフィーリアの夫。
「馬鹿な!この様な所へ時の王が現れる筈が無い!」
「汝は神を測るのか?何かを見なくては信じられぬとはな。愚かな者だ…。」
「何を小賢しいことを!お前の仮面を剥ぎ取り、その本性を暴いてくれる!」
ルドルフはそう言うや、男に向かって間合いを詰めた。それはほんの一瞬であり、暗殺者である彼の速さに常人では避け切れる筈は無かった。
だが、ルドルフが間合いを詰めた刹那、男は目の前から消え失せていたのであった。
「何処へ消えた…!」
そう呟いた時、ルドルフは自らの胸に深々と刺し込まれた剣先が目に入った。それを知るや、ルドルフ
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