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SNOW ROSE
花園の章
Y
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「エッケハルト…君は少し頑固だな。父君のエーベルト殿もそうだったが…。まぁ、それだから信頼出来るんだが…。」
「お褒めの言葉と受け取っておきましょう。では、フローリアンには私から言っておきます故、王子は客室へお向かい下さい。では、失礼致します。」
 エッケハルトはそう言うや礼を取り、そのまま部屋を出ていった。
 ミヒャエルはそれを見届けると、直ぐに机上の書類を全て片付け、鍵つきの引き出しへと丁寧にしまい込んで鍵を掛けた。
 それらの書類は十二貴族当主達や、その他の貴族からの嘆願書や調査書などが含まれており、外部に漏れては国を揺るがしかねない代物であったからである。
 ミヒャエルは鍵を掛けたことを確認して後、その部屋を後にしたのであった。

 場は移って東の客室であるが、そこにはレヴィン夫妻とミヒャエルの姿があった。レヴィン夫妻はこれまでの事柄を詳細に語り、その後に奇跡の証である白薔薇をミヒャエルへと差し出した。
 ミヒャエルはそれを見るや、今まで奇跡を信じようとしなかった己を叱咤し、原初の神へ畏敬の念を持って祈りを捧げた。ミヒャエルは聖騎士の称号を得てはいたが、奇跡そのものには不信を抱いていた。故に、そのような自分を恥じたのであった。
 祈り終えて後、ミヒャエルはヨゼフから白き薔薇をそっと受け取ったが、それからは未だ豊かな香りが漂っていることに気付いた。手折って幾日も経ていたはずであるが、ミヒャエルはそれが奇跡であるかの如く自然に感じ、その香りに心が癒されたという。
「ミヒャエル王子、貴方様は如何でしたか?」
 暫くの沈黙の後、エディアがミヒャエルへと問い掛けた。それはミヒャエルにどの様な事が起こったのかを問うものであり、ミヒャエルはそれを察して簡潔に答えた。
「いろいろとあったが、今こうして生きている。そして、こうして先へと歩き続けているさ。」
 その答えに、ヨゼフもエディアも言葉を返すことは無かった。ミヒャエルは王子として、この国の先を見据えているのである。レヴィン夫妻はただ、このミヒャエルであれば安堵して過ごせる国を築けるであろうと確信していた。
 だが、一つだけ気掛かりなことがあった。それは亡きマーガレットのことである。ブルーメの時もそうであったが、彼がマーガレットのことを避けているように思えたのである。それどころかフォルスタのことさえ出てこないため、夫妻はミヒャエルが未だ彼女のことを思っているのだと思い、それは胸の奥へと仕舞うことにしたのであった。
 もし、ミヒャエルがマーガレットのことでヘルベルトに追い詰められたとしたら、夫妻はミヒャエルを傍らから確りと支える覚悟が出来ていたからである。この旅楽士は、既にミヒャエルを主と定めており、今後その心は堅く揺らぐことはなかった。
 さて、ミヒャエルはレヴィン夫妻と話し終える
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