花園の章
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ここはラタンにある子爵の館の一室である。
そこには今、ミヒャエルとラタン子爵がいたが、このラタン子爵位には現在、弱冠十九歳のエッケハルトという若者が就いていた。
それと言うのも、前子爵である父のエーベルトがヘルベルトの命によって殺されたため、息子である彼が急遽子爵位を継いだのである。
エッケハルトが爵位を継いだ時、この街は子爵殺害のために暴動で荒れ果てており、当初エッケハルトはその若さ故に家臣達との軋轢にも悩まされていた。
しかし、その中で民衆の先頭に立って纏め上げて暴動を沈静化し、その手腕を家臣達に見せ付けることにより、自ら爵位を継いだことを正当化することに成功したのであった。
さて、ここへミヒャエルがいるのには訳がある。それは、この子爵邸に十二貴族次期当主達が集まっていたためである。エッケハルトは次期当主達のために館を明け渡しおり、自らは家臣達と共に別邸へと引き下がっていたが、この日エッケハルトは会議に出席せねばならなかったため、たまたま居合わせたのであった。
「ミヒャエル王子。お客人が要らしておりますが、如何致しますか?」
「…俺にか?」
「いえ、そうではないのですが…。ただ、王子と面識があると聞きましたので。確か名は…レヴィンと申しましたか…」
「旅楽士のレヴィン夫妻か!?」
「はい。お待ち頂いておりますが、次期当主方より先にお話になりたいのではと思い、お伺いに上がりました次第で。」
「では、直ぐに行こう。」
そこまでで会話を区切り、ミヒャエルは机の書類の片付けをしようとしたが、エッケハルトはその間に一通の書簡をミヒャエルへと差し出して言った。
「その前に、ご夫妻がアンドレアス・シュルツ・フォン・プレトリウス様より書簡を託されており、これを王子へとお渡ししてほしいとのことお預り致しております。」
「アディからだって?」
久しく聞かぬ友の名に、ミヒャエルは多少訝しく思いながらも書簡を受け取った。ミヒャエルはアンドレアスとレヴィン夫妻が知り合っていることを知らないのである。ミヒャエルは書簡の封を破り、その内容を確認するや目を見開いた。
「まさか…こんなことが…!?」
そこにはアンドレアスの直筆で、実父のシュテルツ大公がどのように行動を起こし、そしてどのような結末を迎えたかが克明に書かれていた。
また、それと同時に起きたことも書かれ、その後にアンドレアス自身が今後どのように行動したいかも書かれていたのであった。
それを読み終えると、ミヒャエルはエッケハルトに言った。
「直ぐにレヴィン夫妻と話したいから、東の客室へと通してほしい。俺はフローリアンに飲み物を運ぶよう頼んでから行くから。」
「王子、どちらも私だけで事足ります。王子が子爵の執事へ用を言い付けるなど、有り得てはなりませんので。」
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