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SNOW ROSE
花園の章
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である。
 しかし、プレトリウス王は何故他の国の王家の血脈を残したのか?それには理由がある。国を大きくしたならば、一人の王が全ての実権を握るのは些か不都合と言える。そのため、プレトリウス王は敗北したその国の王家に家臣として忠誠を誓わせ、出来うる限り代々までの守ってきた土地を統治するようにしたのであった。
 だが、無理をしてまでこの様なことをした真の目的は、自らを監視させるためであったとも言われている。自分が誤った道に踏み込んではいないか、民は安寧に暮らせるよう取り計らっているだろうかと、外側から監視させていたというのである。
 現に、十二貴族の役目はそれとほぼ同じであり、プレトリウス王がどれ程自らの潔白を貫こうとしたかが窺えよう。
 さて、話が逸れてしまったが、ヨゼフもエディアもその美しい楽器を存分に愛でていた。そこへアンドレアスはレヴィン夫妻へと言った。
「夫妻の様な楽士に相応しい楽器だと思い、ここへと運ばせたんだ。今日は是非、これを響かせてほしい。弦も傷んでいたものは全て張り直してある。」
 夫妻はその言葉を聞き、頭を垂れてアンドレアスに言葉返した。
「はい。心を込めて奏させて頂きます。」

 日は山蔭に落ち、周囲に涼風が吹き始めた。
 庭には夫妻の演奏を聞きに来た者達で賑わい、ネヴィルと妻のアリスは持て成しで手一杯の状態であったが、その中で夫妻の演奏は始められた。
 夫妻は開け放たれた広間にて演奏をするようにし、広間には多くの蝋燭が灯されていた。庭へも蝋燭が何本も灯されていて、それは咲き誇る花々や人々らを照らている。
 それは幻想的ともいえ、レヴィン夫妻の奏でる音に調和していた。皆は持て成しを受けることすら忘れ、夫妻の紡ぎ出す響きに酔いしれていたのであった。
「さて、今宵最後は、この美しいチェンバロによるレヴィン家の音楽をお楽しみ頂きたく思います。」
 ヨゼフがそう言うや、人々から大きな拍手が湧き起こった。エディアは後方に下がって椅子へ腰掛け、夫の音へと耳を澄ませたのであった。
 ヨゼフが鍵盤へと指を滑らせると、その音は鮮やかに宙を舞った。それまではヴァイオリンやリュート、トラヴェルソや用意されていたガンバなどによっていたが、そのどれとも違う音色は、一瞬にしてこの場を別世界へと誘ったのであった。
 聴衆はその澄んだ美しい響きに魅せられ、誰の声も聞こえなかった。
 しかしそれを破るかの様に、突然それは中断させられてしまったのであった。
「音楽を止めよ!大公殿下のお越しである!」
 その無粋な声により、ヨゼフは演奏を止めてそちらを見た。すると、そこへは十数名の兵士を伴って、一人の恰幅のよい男が立っていたのであった。そしてずかずかと庭へ踏み入れると、アンドレアスの前に行きその頬を思い切り平手で打ったのであった。
「アン
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