花園の章
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れたのは、こともあろうにアンドレアスその人であり、その後にはジーグとトビーの姿もあった。三人はいずれも庶民の服装をしており、誰も気付いていない様子であったが、ワッツだけは分かっていた様で苦笑いしていたのであった。
「ですがアンドレアス様…」
「アディで良い。どうせミヒャエルのことはミックと呼んでいたんだろ?」
「はい。しかし何故それを…?」
「ミックともよく城を抜け出して、こうして街へ出ていたからな。今日は少し見てみるつもりが、夫妻が夕べの音楽をすると聞き付けてきてみたのだ。悪かったか?」
「とんでも御座いません。お越し下さり、大変嬉しく思います。ですが…未だ昼を過ぎたばかり。少々早いようですが…。」
「それには理由があってな。お二方、少々手を休めて私についてきてほしい。」
夫妻はそうアンドレアスに言われ、彼の後についていった。一緒に居るジーグとトビーは微笑んでいるだけであったが、どうやら理由を知っている様であった。
暫くして広間へと入ると、夫妻はそこへ置かれていた楽器を見て驚かされたのであった。
「チェンバロではないですか!この街にはクラヴィコードしか鍵盤は無かったはず…。」
夫妻の目の前にあったものは、二段の鍵盤を有する立派なチェンバロであった。
以前にも語ったが、チェンバロは大変高価な楽器であり、主に貴族か資産家が所有していることが普通である。稀に教会や大きな街の劇場などに置かれていることもあるが、それすらも数える程度しかない。
無論、ヨゼフもエディアも鍵盤楽は演奏出来るが、大半は教会でオルガンを演奏することであり、こうした二段式鍵盤を有するチェンバロを演奏する機会は滅多に無かったのであった。
「以前はリーテ侯家の宝物庫へ保管されていたのだが、今のリーテ侯家には音楽をする者が絶えてしまったため、先代侯爵が国王へと献上したんだ。それを国王が私に下賜して下さり、現在に至っている。かなり修復され、一部の木材は取り替えられてしまっているが、反響板と周りの絵は製作当時のままだとか。」
「すると…これは旧リューヴェン王家より伝わる…。」
アンドレアスの話に、ヨゼフもエディアも驚嘆したのであった。
現在のリーテ地方は以前、小さな王国であった。その小国もラッカがプレトリス王国になった際、その戦の中へと埋没してしまい、現リーテ地方としてプレトリス王国の一部となっている。
しかし、この地方を治めるリーテ公ハンス・ベネディクト・フォン=リューヴェンは、その小国を治めていた王家の末裔であり、戦当時のプレトリウス王がどのような戦いをし、どのようにして土地を平定したかを偲ばせる。
現在ある十二貴族の中の五つの家系は、実はプレトリス王国誕生以前から続く家系であり、他は王国誕生後にその五つの家系から分岐したり現王家から分岐したもの
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