花園の章
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ったからである。目の前に居るジーグとトビーの二人であれば、それは確実に成し遂げられる任務である。夫妻はただの旅楽士であり、何の力も持ち合わせてはいないのであるから。
アンドレアスは夫妻が訝しがっていることに気付き、再び口を開いた。
「どうも理解しかねるといったようだな。なに、簡単なことだ。この二人では地位が高過ぎて、次期当主達を不審させかねない。そこでミヒャエル王子と面識を持つお二方に書簡を託し、その上でこの二人を同行させたとなれば、さすがに追い立てることもないだろう。それも高名な旅楽士ともなれば、地位や名誉より信用してくれると言うものだ。」
「そういうものでしょうか?」
アンドレアスの考えに呆れ顔でエディアが言うと、彼は笑いながらエディアへと返した。
「ま、貴族なんてのはそう言うもんだよ。」
そうして後、アンドレアスはレヴィン夫妻へと音楽を頼んだ。夫妻は喜んでそれに答え、大公子息の前で演奏したと伝えられている。
さて、夫妻は翌日の昼頃にはネヴィルの家へと戻っていた。アンドレアスからの書簡は暫く届きそうもなかったため、それまでは気楽に待つことにしたのであった。
故に夫妻はネヴィルとの約束通り、広い家の庭にて小さな演奏会を開こうと、昼休みに帰っていたネヴィルに提案していた。
「夕方までには整えられます。では、仕事先の方々も招いて良いですか?折角の機会ですから。」
「勿論です。この庭であれば、軍隊でなければ大丈夫だと思いますから。まぁ、花が傷まぬ程度にしてください。この美しさを損うのは気が引けますからな。」
「分かってます。そんなことをしてしまうと、アリスに何を言われるやら…。」
そう言って苦笑いすると、ネヴィルは「私は未だ仕事がありますので。」と言って挨拶すると、宿へと出掛けて行ったのであった。
夫妻はその後、演奏する楽器の手入れを始めた。最初に手作りの小型リュートの弦の張り替えから入ったが、大半が傷んでいたために全て外してしまったのであった。
「やれやれ…。アンドレアス様から弦を頂けて良かったわい。」
「そうですわね。ヴァイオリンも全て傷んでましたし、そしてヴィオラも。トラヴェルソとブロックフレーテはコルクを換えないと限界みたいですし、これは職人さんへ頼まないと…。」
「そうだなぁ…。この一件が収まったら、一度ナンブルクへ行くか。あそこであればマイスターが居る。」
「以前にオーボエを貸して頂いた方ですわね。」
「そうだ。今あるヴィオラとトラヴェルソは、そのマイスターの工房で作られたものだからな。」
そう会話をしながら手入れをしていると、ワッツが客人を連れて夫妻のところへとやって来た。手を休めて客人を見た夫妻は、驚いて声を上げそうになった。
「アンドレ…」
「しっ!大声を出すな!」
夫妻の前に現
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