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SNOW ROSE
花園の章
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んだ。トビー、お前にも重荷を負わせて済まないと思っている。」
 アンドレアスはジーグに言葉を返してのち、隣に立つトビーへと声を掛けた。トビーは少し淋しげな表情でそれに答えたのであった。
「いいえ。この国の大事に、僕だけ父の下で安穏としてるわけには行きませんから。アディ兄上、必ず戻ってきて下さい。」
「トビー…お前にそう呼ばれるのは何年振りか…。分かった。必ず戻ってくる。」
 アンドレアスがそう言い終えると、今度はヨゼフがジーグへと言った。
「ジーグ、お前も十分注意してくれよ。大公が亡くなったと知れれば、ヘルベルト王子は何を仕掛けてくるか分からんからな。」
「分かっとる。そう言うお前も、くれぐれも用心するんだぞ。幸いにも、今は碧桜騎士団の動きが弱っとるようだがな。」
 ジーグがそこまで言うと、エディアが不安げな顔をして言った。
「もし碧桜騎士団が動いたなら、この街の人々は大丈夫なのでしょうか?」
「奥方、心配には及びません。兵士も一隊分の人数は居りますし、いざとなれば神の加護が我らを助けてくれます。」
 心配そうなエディアに、ジーグは庭に咲く白き薔薇を指してそう答えたのであった。
 ワッツは粗方出発の挨拶が終えた頃を見計らい、静かに馬車を出した。
 この先、彼等はラタンにてミヒャエルと再会し、十二貴族次期当主達と共に王都へと向かうのである。
 果たして彼等の向かう先には、一体何が待ち構えているのであろうか?それは誰にも想像すら出来ぬことであった。
 それは数百年来、この国に一度も起こらなかった出来事だからである。故に四人は、押し潰されそうな不安と共にラタンを目指したのであった。

 空は秋の深まりつつあるを知らせるかのように高く、ただ人々の騒ぐ様を悠然と見下ろしているだけであった。




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