花園の章
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のであった。人々も兵士も立ち去った後の庭には、レヴィン夫妻とアンドレアスが残っていた。
「御夫妻、この様なことになり、誠に申し訳無い。実の父とて…いや、実の父故に、権力を振りかざして傲慢溺れるとは…赦し難いことでした。私も同様、今まで傲慢に生きて来たのかも知れません。」
「何を仰りますか。貴方様は神により、これからの時を赦されたのです。この先で人々を艱難から救い、そして善い道へ導くことが貴方様の天命なのです。それは原初の神が御決めになったこと。故に、貴方様が我らに謝罪することなど御座いません。」
アンドレアスの謝罪の言葉にヨゼフは答えると、手近に咲いていた白き薔薇を一輪手折り、それをアンドレアスへと差し出した。その白き薔薇からは甘く良い薫りが漂い、まるで皆の苦悩を包み消し去ってゆくようであった。
アンドレアスが畏れと共にそれを受け取ると、傍にいたエディアが彼にこう言ったのであった。
「アディさん。貴方は無闇に苦悩へと縛られてはなりませんわ。この白き薔薇は、邪な心を宿す者を罰すると伝えられていますけど、今の貴方には何も起こりません。ですから、貴方はこれから先を歩んで行けば良いのだと、私はそう思うんですわ。」
そう言うと、エディアは白薔薇を持ったアンドレアスの手を握って微笑んだのであった。
「御夫妻…。この様な私に、これからも力を貸して頂けますか…。」
「無論です。微力ではありますが、惜しむつもりは御座いません。そして、この白き薔薇は潔白の証であり、神からの賜り物。この一輪だけで、我々の見た奇跡を皆に伝えられましょう。」
そうヨゼフが言うと、三人はその場にて再度神への深い感謝と祈りを捧げたのであった。
彼等がアケシュの街を発ったのは、翌日の早朝のことであった。
アンドレアスは急遽ジーグとトビーに統治代行の権限を与え、自らラタンへと赴くことにした。その道すがら、どうしても会わねばならぬ人物が居たからである。
馭者は無論ワッツであるが、ジーグ、トビー、そしてワッツの三人はアンドレアスに言われ、先に出立の準備をしていたため、昨日の奇跡を目撃してはいなかった。故に、三人は馬車をネヴィルの家へ運んで来たとき、その目を疑ってしまったのであった。その庭先には、優雅に香る白き薔薇が咲き誇っていたからである。
三人は直ぐ様アンドレアスに事の経緯を聞くや、その場で膝を折って天を仰ぎ原初の神を讃えたのであった。
暫くの後、皆は支度を整えて馬車へと乗り込んだ。
「出発致します。」
馬車の傍らにはジーグとトビー、そしてネヴィルと妻のアリスに、その他多くの人々が見送りに集まっていた。その誰もが、昨夜の奇跡の証言者であり、この国の行く末を憂う者達でもあった。
「アンドレアス様、どうか無事の御帰還を願っております。」
「ジーグ、後は頼
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