花園の章
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、二人の聖人はヨゼフとエディアに祝福を与え、周囲に集まりし人々に新たなる言葉を紡ぎ始めたのであった。
「人よ、聞きなさい。第一の禍が訪れ、それは速やかに立ち去ります。しかし、その後ろには大きなもう一つの禍が控えているのです。故に、あなた方はその第二の禍のために備えをし、長い月日に耐えうるよう用心しなさい。それは十六月と二十日を数え、この大地と人々とを疲弊させるでしょう。」
「人よ、聞きなさい。この禍の中で新たなる国が興され、その国は大いに栄えるでしょう。その国は神の愛を讃え、再び大地に神の恵みを齎します。しかし、原初の神を畏れぬ者は災いです!その者らは必ず討ち滅ぼされるからです!」
「人よ、聞きなさい。最後まで堪え忍んだ者には、必ず幸福が与えられます。信じて待ち続ける者は神にとって永久の家族であり、聖人の友となるのです。」
「人よ、聞きなさい。それ故に、皆は与えられし律法を守り、新たなる主人に忠誠を誓いなさい。その者は神に選ばれし者故に。」
「その者、新たなる国の上に新しき律法を創らん。」
「先の預言者の言葉の如く、それは成就されん。」
「我らは我が言葉の証とし、聖エフィーリア様より賜りし白薔薇を汝らへ贈ろう。」
「それは新たなる時の証であり、汝らへの愛の証でもある。」
「心せよ!時は速やかに来たらん!」
そう言い終えた二人の聖人は、眩き光の中へと消え去ってしまったのであった。人々はあまりの眩しさに目を閉じていたが、暫くして目を開くと、そこには見たこともない光景が広がっていたのであった。
「これが…スノー・ローズ…。」
そこには真っ白な薔薇が一面に咲き誇り、豊かな薫りを発していた。
アンドレアスはそれを見るや涙を浮かべ、その花弁へとそっと手を触れた。
それは何処までも優しく、無垢であり、見ていたレヴィン夫妻も、無論周囲の人々や兵士達ですら、原初の神の大いなる御業の前に平伏したのであった。
だがしかし、大半の者はその花弁にさえ触れることを躊躇った。その白薔薇は、邪な者を退け罰することでも知られており、多く人々は自分の魂に穢れがないと、とても言い切れなかったからであった。
暫くの間、レヴィン夫妻は神へ感謝の捧げ物として音楽を奏していた。それはまた、聖人として現れた自らの家系に列なる聖ジョージと聖ケインへの想いでもあった。
その響きの中にあって、兵士達は自らの長の骸を庭から運び出し、哀れと思いネヴィルが用意した麻布に包んで馬車へと乗せた。しかし、兵士達は誰一人捕えることはなく、レヴィン夫妻の奏でる響きに耳を傾け、それが終わるまで動こうとはしなかった。彼等もまた、大いなる奇跡の目撃者なのである。
そして最後の一音が空へと融け切った時、人々は再び原初の神へ祈りを捧げ、静かに在るべき場所へと四散した
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