プリズンブレイク
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った。
テパクグの死を見届けた俺は、大慌ての体で看守を呼んだ。まず俺が疑われ、疑いが晴れたあとは、俺も同じ方法で脱獄することを警戒した看守たちによって牢屋内の危険物は徹底的に取り払われ、拘束もされ、食事時以外は猿轡をかまされた。
食事時に『あぁ…これなら程なくストレスで獄中死出来るな…』と呟いたお陰で、拘束と猿轡は外され、食事内容も改善され、結果無駄に馬齢を重ねることになった。今や俺はあの時のテパクグと同じくらいの年になっている。
そして逮捕から258年を経た今日この日、俺はテパクグを見出したのだ。だが。
「…看守さん、お名前は?」
「ドラコムンド・カッソ・テパクグです」
三つ名の最後は俗に云う『転生名』。転生先でも引き継ぐ永遠の名前だ。魂の形も間違いない。こいつはここで自ら命を絶ち、転生したテパクグその人だ。だが…。
「俺の名前は」
「ああ、名簿見てるんで知ってます。転生名で呼んで大丈夫っすか」
―――軽っ。
「三つ名を持ってるってことは、あんたも龍族、なのは間違いないんだよな」
恐る恐る、種族の話に水を向けてみた。
「あー…はぁ、そうなんですけどぉ。俺、『前』の記憶なくしちゃったみたいなんですよねぇ」
うっわやっぱりだ!
偶にいるんだよ、転生で失敗して記憶なくしちゃう奴!!
テパクグさんもなぁ…基本的には思いやり深く優秀な戦士だったんだが、どうにもドジというかずぼらというか、そういう革命家には致命的に向かない部分があった。
正直な話、俺が捕まったのもテパクグさんのドジの巻き添えみたいなものだ。…本人がめっさ凹んでたから直接、口にはしなかったけど。
「三つ名は覚えてたんだ…」
「いやいやいや、ちっとも」
テパクグは顔の前で手を小刻みに振った。…腹立つな、このいかにも人間の若者的な動作。
「俺の魂の形を覚えてるっていう『元・知り合い』みたいな人が近所に数人いて、辛うじて身元が分かったってだけですよ」
「………そっか。なんか身元捜しのサービスとかもあるもんね………」
前世を忘れた龍族というのが意外と居るので、その身元を魂の形をもとに探し出すサービスも存在する。龍族自体、寿命が長いからなのか、特殊な性質のせいなのか、ある一定以上は絶対に増えない…云い替えると少ないので、意外とすんなり見つかるのだ。
「ご家族、とか…いやほら、転生前のご家族とか、どうしてるんだ」
「あー…気まずい感じですねぇ」
「…あー、まぁそうだろうね」
「そうなんですよ!あっちは俺の魂の形を覚えてるんだけど、俺目線だと知らないおっさんおばさんが涙と奇声を発しながら飛びかかってくる、というね、なんかもうワケが分からない状態だし」
―――ほんとご両親報われないわ。テパクグさんが馬鹿だったせいで。
「つかぬことを伺うんですが…」
「…何だ」
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