花園の章
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関わらずその足は早く、二人は仕方無く老人を追い掛けることにしたのであった。
無論、敵の罠である可能性もあったが、このままここへ留まったとしても、恐らくヘルマンと合流は出来ないと考えたからである。敵の罠であったとしても、ユディと二人であれば切り抜ける自信はあった。そのため、ミヒャエルは躊躇うことなく老人の後を追ったのであった。
その老人に付いて暫く行くと、森を背にした農道へと出た。そこは町の入口とは逆であるが、そこで二人はヘルマンの姿を見付けることが出来たのであった。ミヒャエルは、直ぐ様ヘルマンの元へと歩み寄って問ったのであった。
「ヘルマン、これは一体どういうわけだ。」
「王子、それは後程お話し致します。今は一刻も早くこの町を発たなくてはなりません。」
「しかし道案内は…まさか、あの老人…」
そう言いながら老人を振り返ると、ミヒャエルはそこで言葉を失ってしまった。無論、同時に振り返ったユディも同様であった。その理由は、そこに老人の姿が無かったためである。
「ミヒャエル様、お久しゅう御座います。」
「ソファリス…!何故に君がここへ!?」
そこへ立っていたのは、歴史学者のディエゴ・ソファリスであった。
「急遽予定を変更せざるを得ない状況となり、私が参りました。ミヒャエル王子とユディ医師には申し訳御座いませんが、ここから直にラタンへ向かわなくてはならなくなったのです。」
ソファリスの言葉に、二人は顔を強ばらせた。彼の言葉は、この国の状況が更に悪化していることを物語っていたからである。
要は…第二王子の勢力が王都外へと拡大していることを示唆していたからである。
「お気付きだとは存じますが…予定ではアケシュへ向かうことになっておりましたが、かの街に大公殿下が軍を置いたために断念致したしだいで…。今ではツィラ、ノーイ、ドイ、ブルーメなどもヘルベルト王子の手中に…。さすがにラタンや十二貴族領内にまでは届いておりませんが、それも時間の問題ではないかと…。」
「そうなってからでは遅すぎる…。王家と十二貴族との間で争いになれば、この国は簡単に分裂してしまう。一刻も早くラタンへ入らなくては…。」
ミヒャエルは表情を堅くして言った。時間も無い上に戦力も無いミヒャエルにとって、一刻も早く十二貴族の子息が集まるラタンへ入ることが、兄ヘルベルトを止める最良の方法なのである。
「だが入ったとして、一体どうするつもりだ?ヘルベルトは既に、この国の中枢を手に入れている。それだけ強大な力を有しているんだぞ?」
ユディが不安げにミヒャエルへと問い掛けると、ミヒャエルは不敵な笑みを浮かべて言ったのであった。
「奇跡を起こすまでだ。」
ユディには、その言葉が理解出来なかった。ミヒャエルは元来、奇跡というものを信じてはいない。その奇跡を自ら起こすと
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