花園の章
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え去っていたのだという。親友のジーグと共に方々を探し回ったが、何の痕跡も見つからなかったというのである。
「旅人の亡骸など、一体誰が持ち去るというのだ…?だがシオンには済まないと思うが、それは一先ず保留にしておこう。我等が成すべきことをしなくては。それでヘルマン、各地へ分散している騎士達は、どうやって召集する手筈なんだ?」
「はい。それは各地の宿屋に書簡を送り、スノー・ローズを入り口へ飾ってもらうのが合図になっております。合図があった際には、皆はラタンへと集まる手筈になっております。」
「ラタンへか?あそこには十二貴族次期当主達も集まっていたな…。しかし、スノー・ローズとは…。まるで伝説が集まっているようだ。」
ヘルマンの言った<スノー・ローズ>とは、白薔薇の造花を指す。あるはずのない白い薔薇は奇跡の花であり、その造花は旅人の旅路に幸があるよう祈る意味合いもあった。
「伝説が…集まっている、ですか?」
ミヒャエルの言葉に、前に座すヘルマンは戸惑ってしまった。彼は何と答えてよものか分からず暫く黙していたが、そこへユディが口を開いた。
「レヴィン兄弟の縁者、聖マルスの大剣、そしてリーテ公子だ。リーテ公家は、聖シュカの末裔だからな。大聖典に登場する聖人でその末裔が存在するのは、現在四つの家系と言うことだ。その一人、聖マルスの末裔はその大剣をミヒャエルへ託したのだから、我々がラタンへ赴けば、自ずとリーテ公子にもお会いすることになる。」
「あとお一方は?」
ユディの言葉に、エディアが反応を示した。ユディが挙げた家系は三つであり、一つ欠けていたためである。
「エディアさん、後一人はミヒャエル自身ですよ。現王家の祖であるプレトリウス家は、原初の神より加護を受け、民を平安へ導いたとありますからね。聖マルスのように、近年列聖された御方とは対照的で、人物像はよく分かってませんが…。」
「聖マルスが列聖されたのは、そんなに新しいんですか?」
「ええ。亡くなられたのは五十年ほど前ですからね。一方のプレトリウス王は六百年も前の御方で、伝承でしか資料が残されてませんから。」
ユディがそこまで話すと、さすがにこれ以上話を長引かせるのは得策ではないと考え、二人の会話を止めることにした。
「伝説は飽くまで伝説だ。今起こっていることは、我々でどうにかする他ないだろう。それに、いつも神の奇跡に頼っているようではこの先、人の国は成り立たなくなってしまう。」
ミヒャエルは苦笑を浮かべながらそう言った。話していた二人も苦笑し、それからユディが再び口を開いた。
「そうだな。で、このままヘルマン殿を連れて直ぐに出発するか?」
「いや、先ずは騎士達を召集する手筈を整え、ラタンの十二貴族次期当主達へ書簡を出す。数日この町へ留まらねば、書簡も届かんだろうからな。ヘルマ
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