花園の章
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いのである。
しかし、騎士としてのヘルマンの罪は、王子を護れなかったと言うだけで死罪は免れないのである。ヘルマンとて、それを承知の上で言っているのであり、既に覚悟は出来ていたのであった。
だが…敢えて言えば相手が悪すぎたのである。いかな手練れとは言え、三人で暗殺を専門とする者十人相手に戦ったのだ。父王とて、それと分かって死罪に処するとは考えられない。
ミヒャエルは暫し考えを巡らせた末に、ヘルマンへ罰を与えることに決めたのであった。周囲では皆、ミヒャエルがどう決断するかを見守っていた。
「騎士ヘルマン。汝は死をもってその償いとす。」
そうミヒャエルが告げた時、エディアがミヒャエルの前に伏して懇願したのであった。
「王子、それはあまりな御処分と言うものに御座います。どうか今一度、お考え直し下さいますよう!」
「エディア、止しなさい。」
ヨゼフは直ぐ様エディアを制した。気持ちは分からぬではなかったが、次期王になられるであろう御方の裁きに不服を申し立てるなど、本来あってはならないのである。それがこの王国の秩序であったからである。
しかし、それは全て杞憂に終わるのであった。ミヒャエルは微笑みながら、続けて言葉を付け足したからである。
「但し、執行に五十年の猶予を与える。その間に国のために助力を惜しまずに尽くせば、汝の罪は不問とす。」
「王子、それでは罰とは…」
「いいや、これは充分な罰だ。これから先、この国は動乱の波に呑み込まれるだろう。その最中にあって、民を導き救って行くことは至難と言える。それを私と共に遂行しようとなれば、生半可な心では務まらないだろう。死ぬことはいつでも出来る。それどころか、人は皆死すべき定めなのだ。故に、汝は生きて国を救う手伝いをしてもらう。俺は甘いかな…ヘルマン。」
このミヒャエルの言葉に、皆は感嘆の溜め息を洩らした。現代とは違い、この時代の平均寿命は約六十歳。五十年の猶予が与えられたならば、それは罰しないと同じである。だがそれ以上に、ミヒャエルは自分や法ではなく、国全体のこととしてヘルマンの力が必要だと言ったのである。ミヒャエルの言葉をそのまま受け取るのであれば、それは紛れもなく償いであり、また大いなる赦しでもあった。
「王子…わが魂にかけ、わが君の言葉に従います。」
ヘルマンは震える声でそう告げると、深々と頭を下げたのであった。
その後のことである。皆はこうなった経緯を纏め、今後どう行動するかを話し合っていた。
「そうか…シオンの遺体は消え去っていたのか…。」
話しの中で、もう一人の騎士シオン・バイシャルについて触れていた。
ヨゼフによると、息のあったヘルマンをこのレクツィへと運んで後、そのまま直ぐに引き返したのであるが、樫の木陰へ横たえていたはずのシオンの体は、跡形もなく消
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