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SNOW ROSE
花園の章
W
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をすべく準備を整え始めたのであった。
 この村の大半は緑豊かな場所で、一見すると森の中に孤立した村のように見える。しかし、暫く歩けば本街道へ出ることができ、旅の合間の休憩には打ってつけの村であった。
 それ故に、この診療所は村の奥まった場所に作られ、病人や怪我人が澄んだ空気の中でゆっくりと養生出来る様に設計されていた。無論、無料と言うわけには行かないが、一般の町医者よりも格安になっていた。
 この医師のツェラーであるが、元は裕福な資産家であった。この時代、医学は貴族や資産家などがこぞって学んでいた。
 無論のことながら、医師の大半は上流階級の者がなっていたのである。その中でも、このツェラーやユディなど、ごく一部の者は弟子を集めて私塾を開き、一般の民にも無償で医学を学ばせていた。
 その反面、上流階級の者だけを集めた私塾では高額な学費を取っていた。その学費の大半は薬代や医療道具などに使われており、上流階級の者達はそれを知っていて子供を通わせていたのである。
 医学を学ばせて民を救える一石二鳥の考え方だが、ただの自尊心の満足に他ならない。ツェラーにしろユディにしろ、それと解っていて行っているのである。
 そのお陰で、疫病や行き倒れで亡くなる者は減り、大聖堂さえ医師を抱えられるようになったのであった。
 これは隣国リチェッリで王暦五五九年に起こった医学革命に由来する事柄しているのだが、いずれ語られる時があろう。
 さて、一行は男が休んでいる部屋へと着いた。材質はあまり良いとは言えない扉であったが、そこには細やかながら花や天使の彫刻が施され、見ただけで安堵出来る雰囲気を醸し出していた。
 ヨゼフがその扉をノックすると、中より「どうぞ。」と短い返答があった。ヨゼフがその扉を開くと、続く三人も部屋の中へと入っていった。
 部屋はそう広くは無かったが、明るく清潔に整えられた部屋であり、その中に安楽椅子へ座った男の姿をとらえることが出来た。
「ヘルマン!」
「王子!御無事だったのですね!」
 ミヒャエルを見た男は、あまりのことに椅子から立ち上がった。
 男は直ぐ様その場へ片膝をついて正式な礼を取って言った。
「この度のこと、全て私の無力さ故の失態。王子を危険に晒し、かつ仲間を喪わせたること厳罰に値します。」
「ヘルマン、それ以上言うな。お前が生きて、こうして会えただけでも嬉しいのだから…。」
「いいえ。王子、これを罰せねば、他の騎士に示しがつきませぬ。私の罪は償われるべきもの。そうでなくては、律法は一体何のためにあるのでしょうか?王子、罪を罰せられぬ者は、人の上に立つこと儘なりませぬ。正しく罰してこそ、他にもそれを認めさせられるのです。」
 ヘルマンの言い分は正しい。一国の王になろうとするならば、正しき道を歩まねば国自体を腐敗させかねな
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