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SNOW ROSE
花園の章
W
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国王印と宝剣を奪い盗ったそうだ…。」
「なんだって!?」
 ミヒャエルの言葉に、ユディが瞬時に反応を示した。周囲の者達はどう反応してよいか解らないと言った風であったが、国の大事であることは少なからず感じ取っていた。
「それじゃあ今、国王印と宝剣は、第二王子の手にあるってことか?あり得ない…国王印は代行のクリストフ殿より奪えたとしても、宝剣は王城地下の宝物庫へ厳重に保管されていたはずだ。国王ですら、国の祭事にしか触れられぬもの…。」
「どうやら、管理を任されていたシュテルツ大公を抱き込んだみたいだな…。」
「はぁ!?現王の兄であり、君の伯父をかい?」
 ユディは眉間に皺を寄せ、固い表情でミヒャエルを見たのであった。
 現王シュネーベルガーW世には、十ニ人の兄弟がいた。流行り病などで九人が死んでしまい、現在はルーン公アンドレアスと、先に出てきたシュテルツ大公の二人のみが存命していた。
 このシュテルツ大公であるが、軍の統括と財政顧問、そして宝物庫の管理を管轄していたのであった。いわばこの国第二位の権力者である。
「それで、ベッツェン公は無事なのか?」
 ユディがミヒャエルへ問うと、彼は「今のとこはな…。」と一言呟いただけであった。それ以上詳しい情報は記載されていないようで、ミヒャエルはそのまま書簡を最後まで読んでいたのであった。
「王城では、その四分の三が既にヘルベルトに従っているようだ。国王は無論だが、母上達や兄上に従わない王の側近らは、皆北の塔へと軟禁されているようだ。
「ばかな!現王を北の塔へ軟禁するなど、有り得てはならぬ一大事ではないか!」
 ユディが激昂して言った言葉は、ミヒャエルにしか理解出来なかった。
 あまり知られてはいないが、王城には四方に一つずつ塔が建てられていた。その一つ一つには役割があるのであるが、北の塔は貴族階級の者が罪を犯した際に入れる、いわば刑罰塔であった。故に、ユディが激昂したことは当然の反応と言えるのであった。
「落ち着けユディ。お前の気持ちも分からなくはないが、ここでどうこう出来るものじゃないんだからな。」
「分かってる。しかし、これが黙っていられるものか!全く、歯痒いばかりだ…。だが、その書簡はどうやって持ち出せたんだ?容易く持ち出せたとは思えないが…。」
「恐らく、未だ内々に動ける者が居るんだろう。表面上従っているよう見せ掛け、外部と接触している者が…。それより、先ずは彼の元へ行こう。」
 そこでミヒャエルが話を切って席を立つと、皆が一斉に立ち上がった。
「そうですな。名も明かしては下さらんので、貴方様が行かれれば明かして下さるでしょう。部屋へは、私がご案内します。」
 ヨゼフはそう言うと、エディアと共にミヒャエルとユディを連れてその場を後にし、ツェラー医師はそのまま残って患者の診察
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