ターン74 鉄砲水と冥界の札師
[13/13]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
問をぶつけてみた。
「そういえばさ、夢想。藤原優介……って名前、知ってる?」
突然の変な質問にも素直に少し考え込み、走りながらゆっくりと首を横に振る夢想。何を言ってるのかと言わんばかりの口調で、不審そうに逆に聞き返す。
「どうかしたの、清明?そんな名前の人は聞いたことがないよ、だって」
「え!?」
『む?これは……予想外の反応だな』
突然大声を出して驚く僕に、いよいよ不審そうな目を向ける夢想。でも、こちらも今の言葉のせいでそれどころではなかった。夢想は、藤原優介の存在を知らない?
え、ちょっと待って、これはいったいどういうことだろう。チャクチャルさんの推察が正しければ、藤原の存在に関する偽りの記憶は既にアカデミア中に広まっていなければおかしいはずだ。にもかかわらず、夢想はその影響を受けていない。そういえばさっきのミスターTも、途中で何かに気が付いてから妙にあっさりと勝負を切り上げていた。そしてそのすぐ後で、夢想がこの場にやって来た……いや、さすがにそこまでは考えすぎか。夢想を疑うなんて、そんなことする意味はない。彼女と過ごしてきた、この3年間の記憶に嘘はない。彼女は僕の仲間で、それと……かけがえのない、大切な人だ。
「ごめんごめん、夢想。じゃあ、その場所に案内してよ」
「うん。こっちだよ清明、ってさ」
再び彼女の後をついて歩きながら、今浮かんだばかりの疑心の炎を頭の中で打ち消そうとする。だけどいくら努力してもその小さな小さな種火は消えず、いつまでも頭の中でくすぶり続けていた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ