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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十九話 皇帝崩御
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ヒテンラーデ侯はこの事態を知っているのか、オフレッサー元帥」
「此処に来る前に知らせました。侯は陛下に御報告すると」
「そうか」
シュタインホフも生気が無い。もっとも生気が有る人間などこの部屋には居ない。皆、この先の展望が見えずにいる。
ヴァレンシュタインは帝国軍将兵の心に毒を植え付けた。将兵達は帝国そのものに、何のために戦うのかに疑問を持ち続けるだろう。そしてその疑問は将兵から帝国臣民全体に広まる……。帝国は革命という巨大な爆薬を背負わされて焚火の周りを歩いているようなものだ。一つ間違えば革命は爆発し帝国は吹き飛ぶだろう。
TV電話が呼び出し音を奏でた。エーレンベルクがのろのろと受信スイッチを押す。スクリーンにリヒテンラーデ侯の顔が映った。
「リヒテンラーデ侯、何という事を」
『後にしろ、軍務尚書』
「何を言って」
『後にしろと言っているのだ!』
リヒテンラーデ侯の激しい言葉にエーレンベルク元帥が口籠った。
『陛下が先程、御倒れになった』
「な、なんと」
『陛下が御倒れになったのだ、軍務尚書!』
尚書室が凍りついた。
『陛下は後継者を定めておらん。陛下に万一の事が有れば皇位を巡って内乱が起きかねぬ。何としてもそれは防がねばならん。軍の力をあてにしてよいか?』
エーレンベルクもシュタインホフも黙り込んだ。宇宙艦隊は司令部が壊滅状態、そして中核である精鋭部隊も全滅。その状態で内乱を防ぐと言っても簡単な事ではない。ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯も自前の軍を持っているのだ。一月前なら恐れることは無かった。だが今は……。
「帝都防衛についてはお任せください、オーディンで地上戦は起こさせません」
躊躇うな、今は最善を尽くすしかない。俺の言葉にエーレンベルクが頷いた。
「軍は最善を尽くします。しかし、例の件については納得のいく説明をしてもらいますぞ」
『分かっている、頼む』
スクリーンからリヒテンラーデ侯の姿が消えた。
「オフレッサー元帥、帝都防衛は卿に頼む。宇宙艦隊の再編はシュタインホフ元帥、お手数だが卿に頼みたい」
「承知した。して、軍務尚書は如何なされる」
シュタインホフの言葉にエーレンベルクは忌々しそうに吐き出した。
「例の件、説明はともかく後始末は急がねばなるまい。事は軍だけの問題ではない、国務尚書と善後策を検討しなければならんだろう。一つ間違うとイゼルローンで反乱が起きかねん。反乱軍に寝返ったりしたらとんでもない事になる」
シュタインホフ元帥が顔を顰めるのが見えた。なるほど、確かに有り得る。駐留艦隊が全滅した、そんな時に例の一件の真実を聞いたのだ。要塞守備兵の士気は最悪だろう。シュタインホフ元帥が俺を見た。こちらも異存はない、黙って頷いた。
「イゼルローンの
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