花園の章
V
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が洗濯のために持って行き、それを洗濯して干したのであった。
アリシアは台所で夕食の支度に掛かりきりとなり、まるでそれがいつものことだと言うように、ミヒャエルが気を使う隙を見せないようにしている姿は、まるで家族の愛を注がれているようにさえミヒャエルは感じたのであった。
しかし、それは逆に、ミヒャエルの心を苦しめる結果にもなっていたのである。
もし、ミヒャエルが第三王位継承者だと知られれば、この家族の対応はがらりと変わってしまうだろう。そして、それを言うことの出来ぬ自分が、大いに腹立たしく思えていたのであった。
- いずれ必ず…この恩に報いよう…。 -
この時、彼が心の中で呟いたこの言葉は、後にこの家族だけでなく、国全体を幸福へと導く切っ掛けとなるのであるが、それは未だ遠い先の話である。
十日ほど経った後の話である。ミヒャエルはかなり回復し、家の内外を歩き回れるようにまでなっていた。そのためか、ミヒャエルは家の人々が出掛けると、庭に出て花壇や庭木の手入れをしたり、家の細かな部分の掃除をしたりと、リハビリがてら出来ることをやっていた。
アリシアに見つかってしまうと安静にしていなくてはと叱られてしまうのだが、ミヒャエルは何故かそれが心地好く、ついつい動き回ってしまうのであった。
そんなある日、ミヒャエルの元へユディが客人を連れてきたのであった。
「お久しゅうございます。ミヒャエル王子…。」
ミヒャエルの前にて礼を取ったのは、紛れもなくレヴィン夫妻であった。
当初、レヴィン夫妻はユディから話を聞いたその日に出発するつもりだったのであったが、連日の看病の疲れもあってかヨゼフもエディアも体調を崩し、数日休養してからの出発となってしまったのであった。怪我をした男の看病には、ジーグが看護の出来る者を二人雇ったため、今は何の心配もない。
しかし、二人共に顔色は悪く、本調子とは行かない様であった。
「わざわざ出向いて頂き、誠に恐縮です。どうぞ礼など取らず、あの時のように気楽に接して下さい。今はただのミックですから。その様に畏まられるような立場にはありません。」
だが、夫妻はそのミヒャエルの言葉を受け、頭を上げることなく答えたのであった。
「ミヒャエル王子。僭越ながら申し上げれば、貴方様は今や、この王国を救える唯一の希望なのです。どうぞ礼をお受け下さい。」
このヨゼフの言葉に、ミヒャエルは嫌な予感を覚えた。今居るブルーメの街は王都に近いとは言え、あまり情報の入ってこない田舎でもあった。本街道に近いレクツィの方が、返って情報が入りやすい環境にあることは明らかである。
レヴィン夫妻は様々な情報を持って、このブルーメへと来たに違いなく、故にミヒャエルは勝手と承知でその話題に触れることにした。
「旅でお疲れのところ悪
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