花園の章
V
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のは至難と言えるのであった。
ミヒャエルとて二人の死なぞ望まないが、相手は碧桜騎士団暗殺部隊であり、たとえ手練れの騎士とはいえ、たった二人だけで相手が出来るとは考え難いのが純然たる事実であった。
「ミック、それならば心当たりがある。七日ほど前だが、レクツィの村にいる医者の知り合いから、運び込まれた男を見てほしいと書簡が届いて見に言ったんだ。熱が全く下がらないと言うんで診たんだが、君と同じ毒にやられてたんだよ。」
「一人だったのか?二人じゃなく?」
「ああ。聞けば二人いたとのことだが、一人は既に亡くなっていたとのことだ。しかし、運び込まれた男だって、あの怪我でよく生きていたと言える。発見した人が良かったのだろうな。確か…何かの経営者と旅楽士の夫妻だったと聞いたが…。」
「旅楽士の夫妻…だと?まさか、レヴィン夫妻じゃ…」
「そうだ。確かそんな名前だった。なんだ、知り合いだったのか?」
ミヒャエルは言葉に詰まった。様々な思いが交錯し、言葉に出来ない想いが溢れだしていた。
- まさか…あのレヴィン夫妻の名をここで聞くなんて…。 -
ミヒャエルは暫く目を閉じ、そして意を決したようにユディへと言った。
「ユディ、レヴィン夫妻に近々会うことは出来ないか?」
「大丈夫だろう。男が完治するまで面倒を見ると言っていたからな。僕は明日レクツィへ様子を見に行くが、落ち着いていたらご足労願ってくるさ。」
「済まないな…。」
「何を言っている。ミック、君には大きな借りがあるからな。これくらい大したことじゃない。」
ユディのこの言葉は、友であり支援者でもあったミヒャエルへの感謝の念に他ならなかった。
ユディは医師を志てリチェッリへと旅立つ際、その旅費や学費をミヒャエルに出してもらったのだ。伯爵家はそれどころではなかったため、一金貨も出せる状態ではなかったのである。
「ユディ。あれはお前に才能があったから、俺が勝手に出したんだ。あの時も言ったが、お前が医師になって人々を助けられれば、俺は見返りを求めない。そして今、お前は充分にそれを果たしているんだから、恩義に感じないでほしい。」
ミヒャエルはユディへと言った。その言葉を聞き、ユディは微笑みながら静かに言葉を返した。
「何も変わらんな。だが、これだって僕が勝手に思って遣っていることだ。医師の志を甘く見るなよ?」
ユディにそう返され、ミヒャエルは変わらぬ親友の人柄に懐かしさと安堵を感じたのであった。
そうしているうちに、ウォーレン家の人々が帰ってきたため、ユディはミヒャエルへと薬を手渡して、そのまま部屋を出ていったのであった。
さて、ウォーレン家の人々は、先ずミヒャエルのためにあれこれと世話をした。始めにマルコが着替えをさせ、その後にシーツと上掛けを交換した。それをアーリーン
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