花園の章
V
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ーリーン氏は仕事に出ているし、娘さんは薬草を採りに行っている。でだ、この肩の傷はどうしたんだ?崖から落ちた傷じゃないだろ?」
今までとは打って代わり、ユディは真剣な表情でミヒャエルへと問った。
ミヒャエルは何とか話をはぐらかそうと試みたが、医師として傷が何でつけられたものかを解っていたユディに、そのような試みは通用しなかった。
「ミック?正直に言わないと、骨の二、三本も折ってしまいそうだよ?」
「医師が脅迫するなっ!」
しかし、この医師ユディ・アルサルであるが、明かしてしまえば十二貴族の一人、アウグス伯ミレーネ・フォン・マウゼンの次男なのである。長男が爵位を継ぐため、ユディは自由に夢を追うこと許されていたのである。
彼が名を変えているのは、何かあった時に実家…伯爵家に迷惑を掛けないためであり、別に疎遠になっていると言うわけではない。正式にはユーディアス・フォン・マウゼンであり、ユディと言うのはミヒャエルに呼ばれていたニックネームで、家では愛称として呼ばれていた名であった。
この時のミヒャエルにとって、十二貴族の力はどうしても借りたいのは言うまでもないが、親友を巻き込むことに躊躇いが無いわけではない。しかし、そう考えて言い出せないミヒャエルよりユディの方が上手なようで、無言のミヒャエルへとこう言ったのであった。
「王家ではヘルベルト第二王子が騒動を起こしているのだろ?君の命が狙われているなんてのは、その傷を見たときから検討はついてる。なんせ使ってあった毒が特有のものだったからなぁ。恐らく短剣か何かに塗ってあったのだろうがね。」
「夢は叶ったようだな…ユディ。」
「お陰様で。君の方は大分苦労しているようだね。まぁいい、ここでもう暫く養生することだ。内密に君のことを父上には書簡で知らせてあるから、完治したらカスタスへ行け。」
ユディの言ったカスタスとは、アウグス地方の東にある大きな街であり、コロニアス大聖堂があることでも知られている。隣国のヨハネス公国との国境に面しているが、コロニアス大聖堂があるこの街は、宗教上の不文律のために戦時でも安全であった。
言ってしまえば、カスタスを統治しているのはコロニアス大聖堂であるとも言え、それは現アウグス伯も認めているのである。故に、この国…いや、この大陸で一番安全な場所と言えばカスタスと言えたのであった。
「いや、それは出来ない。俺と共に、二人の騎士が襲撃に遭ったんだ。先ずはその二人の安否を確認しなくては…。」
ミヒャエルは襲撃時のことを思いだし、ヘルマンとシオンが無事でいることを願った。ともすれば二人とも…という考えが頭を擡げたが、それでも探さぬわけにはゆかない。
彼らが生き延びていれば、他の仲間とも直ぐにでも合流出来るはずである。運悪くそうでなかったとすれば、騎士達を召集する
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