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SNOW ROSE
花園の章
V
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俺の真の名は、ミヒャエル・エリンガー・フォン=プレトリウス。この国の第三王位継承権を持つ者。告げることが出来ず、ずっと心苦しかったんだ…。アリシア…君には特にな…。」
「そんなの…今更だわ…。」
 アリシアはミヒャエルへそれだけ呟く様に言うと、そのまま蹲ってしまったのであった。ミヒャエルはアリシアと共に蹲る様にして、彼女のことを抱いて言った。
「本当に済まない…。君の御両親にも…。」
「謝らないで…。だって…貴方は…この国の王子じゃない…。私みたいな庶民に、そう容易く頭を下げちゃいけないわ…。」
「そんなことはない。貴族とか庶民とか…そういうのは関係ないんだ。ただ、俺が詫びたいだけんだ。これが今の俺に出来る、精一杯のことだからな…。」
 ミヒャエルはそう言ってアリシアの顔を覗くと、アリシアは泣き顔に微笑みを作ってミヒャエルへと抱きついた。
「バカ…。そんなことじゃ、この先もっと大変になっちゃうわよ?」
「分かってるよ。」
「ほんと…優しくてお節介で…手の掛かる王子様ね。」
 アリシアはそこまで言うとミヒャエルから腕をほどき、そのままスッと立ち上がった。そして続いて立ち上がったミヒャエルを見上げ、静かに問ったのであった。
「直ぐに行くの?」
 その顔は先程とは打って代わり、何かを吹っ切った様な清々しい表情を浮かべていた。瞳は未だ赤くなってはいたが、そこにはもう気弱な彼女は居なかった。
「明日にでも出発しようと思う。」
「そう。それじゃ、父さんと母さんにも話さなきゃね。今日は張り切って夕食作るわ。ユディ先生もお客人のお二方も、是非ご一緒に。」
 皆はその言葉を聞き、暫し呆気に取られていた。先程まで涙を流していた女性とは、とても同じ人物には思えなかったからである。
「いえ…それでは御両親に迷惑が…。」
 後ろへ下がっていたエディアが控え目にアリシアへと言うと、彼女は微笑んでこう返したのであった。
「いいえ、これは私からの持て成しです。これから先、一体何があるか分かりません。今の私に出来ることは、手料理で持て成す位しか出来ませんから…。だから、どうか受けて下さい。」
 アリシアがそこまで言った時、背後から二人の人物が姿を現して皆を驚かせた。それはこの家の主とその妻であった。どうやら話を聞いていた様で、部屋へ入って直ぐ、ミヒャエルの前へと赴いて略式の礼を取ったのであった。
「ミヒャエル殿下、今までのご無礼を御許し下さい。知らぬこととは申せ、高貴な身分のお方にあの様な振舞い…決して赦されることでは御座いませぬ。」
 突然のことに、ミヒャエルは慌てて二人を制した。
「頭を上げて下さい。あなた方は俺の命を救ってくれた恩人です。俺に頭を下げる必要なありません。」
「滅相も御座いません!もし存じていたのであれば、我が家よりユディ先生
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