花園の章
V
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ならない。どの様な親であれ、年頃の娘にその様なことをさせるわけにはゆかぬと思うのは、至極当然の感情であろう。
「アリシア。この方も先生の所の方が治りも早かろう。それに、お前は年頃の娘ではないか。病人の世話をなど到底させられんよ。」
「いいえ!何と言われましても、この方の面倒は私が看ます!」
ユディとマルコは、言い張るアリシアに溜め息を洩らしたのであった。一度言い出すと、アリシアはあきらめることはない。言わば強情な性格なのである。それを知っていたユディは、アリシアへと溜め息混じりに言ったのであった。
「仕方の無い子だね…。アリシア、なぜこの男の看病なんて…?」
ユディの問い掛けに、アリシアはうっすらと頬を紅く染めた。それを見たマルコは、あまりのことに目を丸くして言った。
「アリシア…お前まさかこの方を…?」
「はい…。素性すら知れませんが、私はこの方を好いております。想い届かずとも、私はこの方の力になりたいのです。」
「だからと言って…」
マルコはどう言って良いやら分からなくなった。今までどの様な結婚相手を連れて来ても、全く見向きもしなかった娘が、助けた旅の男に想いを寄せてしまうとは…。全くの想定外と言える事実に、マルコは喜んで良いやら悪いやら…。
「分かった。アリシア、お前が責任を持って面倒を看なさい。しかし、何かあれば直ぐにユディ先生のところへ連れて行くからな?」
呆れ顔でアリシアへと言ったマルコに、これまた呆れ顔のユディが言った。
「マルコさん、本当に宜しいので?」
「こうなっては仕方の無いことです。アーリーンも理解してくれるでしょう。」
「お父さん、ありがとう!」
あまりに嬉しそうなアリシアの笑みに、ユディもマルコも苦笑せざるを得なかった。
その日より二日後、男はようやく深い眠りから目覚めた。
「俺は…どうなったんだ…。」
男は目が覚めるや、そう呟いた。近くで花瓶の花を取り替えていたアリシアがそれに気付き、男の傍に寄って言った。
「お気付きなりましたか。ここはブルーメの街です。あなたは湖の畔で倒れていたそうですよ?」
「湖…?ブルーメ…?」
男は傍らにいたアリシアの言葉に暫し戸惑っていたが、直ぐ様起き上がろうと身体に力を入れようとして断念した。目に見える傷はかなり癒えてはいるが、骨はそう簡単に治るものではなく、急に動かそうとして激痛が走ったのである。
「急に起き上がろうとしてはいけません!貴方は多くの傷を負い、打撲に骨折までしていたんです。恐らく、谷川に落ちて湖に流されたのでしょう。今暫くは安静にしていなくては…。」
「…そうか…。俺は…どれ程眠っていたんだ…?」
「八日程です。そのお陰で傷も随分と良くなりましたわ。私は貴方が目を覚ましたことを父と母に告げてきますので、そのまま休んでい
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