フロンティアを駆け抜けて
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たかもしれない。
「……それに、今安全なところから見てるお客さんのことも嫌い。このフロンティアで戦って、ポケモンバトルってすっごく痛いし苦しいものだって私は思った。自分の意志でやるならいいけど、苦しんでる人やポケモンを見て笑顔になる人なんて大嫌い」
「ジェム、言い過ぎだ。私の事をどう思おうと構わないがお客さんへの言葉は慎みなさい」
「言ったわよねお父様。……私はお父様と喧嘩をしに来たの。お客さんの事なんて知らない。お父様に憧れるのはもうやめる。私は……私と私の大事な人の為だけに戦う。名前も声も知らないたくさんの人の事なんて知らない!!」
ジェムの言葉に客席が沸騰する。怒声歓声興奮哄笑。でももうジェムには関係ない。実況や観戦なんて、勝手にしていればいい。
「司会。バトル開始の宣言をお願いします。ここまで頑なならばもはや私も言葉での説得はすまい。やはり私に出来るのは勝負に勝つことと……ホウエンチャンピオンとして、挑戦者を圧倒することで観客に楽しんでもらうことだけだ」
静かな、しかし内に深海の重たさを秘めた声だった。司会が咳ばらいを一つして宣言する。
「ではルールは説明不要、由緒正しき六対六のダブルバトル、もう心行くまで親子喧嘩をやってくれ!!」
巨大モニターがジェムの表情からサファイアとジェムの二人に切り替わる。フロンティアでの全ての戦いを終え――チャンピオンのサファイアが勝負を仕掛けてきた。後は目いっぱい憧れだった人への決着をつけるだけ。ジェムは腰につけた二つのボールを片方ずつの手でつかみ放る。
「いくよルリ、ラティ!!」
「りるぅ!」
「ひゅううあん!」
地面をポンポンと弾みながらマリルリが、紅白の身体でフィールドを飛翔するラティアスが登場する。ジェムが特に頼りにしている友達と相棒だ。対するサファイアが右手を開くと手品のようにモンスターボールが二つ現れ、そこから同時に二体のゴーストタイプが現れる。オーロットやシャンデラとは違う、しかしタイプは同じポケモン。
「ガラガラ、ジュナイパー。頼んだぞ」
両手に太さの違う骨を持ち、その両端に炎を揺らめかせるガラガラと、フードを被った人間のようにも見える矢の名手ジュナイパーが現れる。揺らめく炎とフードから影が滲み、本体の横に小さな気配を感じ取る。やはりサファイアの隠れた本質である『死線幽導』は加減なく使うつもりだ。だとしても、ジェムは臆するつもりはない。
「それでは……バトル開始ィ────!!
「ラティ、『ミストボール』!」
「ジュナイパー、『エナジーボール』」
開幕した瞬間、ラティアスとジュナイパーの放ったエネルギー弾が放たれる。ぶつかり相殺してミストボールが霧となって広がりジェム達
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