フロンティアを駆け抜けて
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ムにはわかった。
「それは違うわお母様。お母様が私を好きでいてくれなかったら……私は、何もできないのに勝手なことばかり言う本当に弱い子だった。お母様……大好きよ。電話、ちゃんとするからね」
「ジェム……私も大好きだよ、ありがとう。いってらっしゃい」
「うん……うん、もうちょっとしたら行くね」
旅に出ても母親とはいつでも話せる。でも触れ合えなくなるのはやっぱり寂しいからその体をぎゅっと抱きしめて、一分か五分かはわからないけどジェムの気が済むまで抱きしめ合った。その間、周りは何も言わない。それが終わった後────ジェム達は、フロンティアを後にした。
「……ジャックとは何も話さなくてよかったの?」
「うん、『僕にしてみればジェムが旅する数年なんて君たちの一日より早い』って」
「不老不死とはいえ小さいくせに上からですね……ちなみに行先って決まってるのですか?」
「あ、そういえば言ってなかったわね。今からドラコさんの故郷に行くの」
「ああ、だから私の竜に身を任せていればいい」
ホウエンの夜空は風が温かく気持ちがいい。バトルタワーの時は見る余裕がなかった始めて見る夜景に目を奪われながらも仲間たちと会話する。
「……ドラコの故郷ってどこ?」
「千年単位の歴史がある山奥とかですかね……」
「貴様ら私を何だと思っているんだ」
「ドラゴン厨」
「右に同じく」
「振り落とすぞ貴様ら」
「あはは! 私もそんなイメージだったけど……キンセツシティのジムで育ったんだって!」
「都会だ……」
「あそこってドラゴンいましたっけ……?」
「それはついてからドラコさんにゆっくり教えてもらいましょう! ね、みんな!」
ジェム達はお互いのことをまだまだ知らない。ジェム達の付き合いも人生もまだ始まったばかりだ。
(でもそれは、もう誰かに見世物にされたり、大人の人達に支配されたりなんてしない)
(私たちは自分が選んだ友達と一緒に生きて、いつか自分で選んだ道を歩んでいくんだから!)
父親の理想を拒否して、自分が何になりたいかは決まっていない。でもそれはこれからゆっくり見つければいいとジェムは思う。困ったときは、今まで助けられた人たちの手をもう一度借りてみよう。少女たちは、時に過去を振り返りながら、誰も知らない未来へと駆け抜けていく。
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