花園の章
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々が夜空を飾っていた。
このトリスにもジーグの店があり、ジーグはいつものようにそこへ行くようワッツには話してあった。そのため、わざわざ宿探しをすることもなく、一行は直ぐ様宿へと入ることが出来たのである。
「さすがにトリスには人が多いな。以前は静かな農業地帯だったのだがねぇ…。」
宿に入ると、ヨゼフがぼそりと呟いた。
レヴィン夫妻は以前より何度もこの街を訪れていたが、その都度トリスは大きな産業都市へと変貌していったのであった。
その理由として、トリスが綿を中心とした産業に転換していった成果であったが、それ故に人が仕事を求めてこの地に集まり、麦を中心にしていた時代の静かで閑な風景は喪われていったのであった。
「ヨゼフ…。お前はいつの時代の話をしとるんだ?まぁ、お前の気持ちも解らんではないが、今は貧しさに苦しまずに暮らせとる。それで良いとしようじゃないか。」
「そうだな。以前は喰うに困る者も多かったが、ここ数年はそんな者は居らんようになった。幸せなことだ。」
そうは言ったものの、ヨゼフはどこか淋しげであり、そんなヨゼフをエディアとジーグは苦笑しながら見たのであった。
さて、馭者のワッツであるが、彼は馭者専用の部屋へと入っていた。いつでも出発準備が出来るようにと、馭者には馬小屋の隣に専用の部屋が用意されているのである。
とは言うものの、他の正規の部屋と変わることはなく、食事も風呂も待遇は同じであり、下級の職種にあたる馭者には勿体無いほどであったと言われている。
今では歴とした職に数えられる馭者であるが、当時の身分は貴族の召し使いよりも低かったのである。
「あ、ワッツじゃないか!また社長の足でこっちに来たのか?」
ワッツが用意された部屋へと向かっている最中、前から一人の青年が彼へと声を掛けてきた。
深い金色の髪にコバルトブルーの瞳で、どうみても馭者ではない。その彼を見てワッツが言った。
「トビーじゃないか!こんなところで何やってるんだよ!」
「いやぁ、父上の言い付けで、ここへ届けものをね。本館に行くと、支配人のシュルツさんに接待されそうでねぇ。」
「ま、貴族の子息じゃ仕方無いけどな…。しかし、こんなとこから入らなくとも良いじゃないか。今日はフラーツさんも来ているし、本館へ行けば良いだろ?」
「いや、もう用は済んだんだ。それで帰ろうと思っていた時に、偶然君に会ったってわけだよ。」
トビーと言われた青年は、そうワッツに言って笑ったのであった。
このトビーであるが、ルーン公の末子にあたり、正式にはトビー・アーテアス・フォン=プレトリウスと言い、この時は父ルーン公の元で政治や経済、金融などの勉学に励んでいた。
「そうだ、トビー。君は音楽が好きだったよな?」
「ああ、そうだけど。」
「今、フラーツさんと一
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