花園の章
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考えれば、より多くの保険をかけておくに越したことはないのである。
このプレトリウス王国のみならず、大陸全土に情報網のあるジーグを味方に付けられれば、それこそ百人力と言うものである。
それから暫くの後、ヨゼフは意を決したように、その重くなっていた口を開いたのであった。
「それでは語るとしよう。ことの始めは、北にあるフォルスタの街に行き着いたところからでだ…。俺達はそこで、偶然にも若い二人連れの旅人と出会った。歴史調査をしているということで、偶然同じ宿に居合わせ俺達を案内してくれた歴史学者のお陰で、若い二人連れとは直ぐに打ち解けることが出来た。話している内に、俺達が有名な廃墟に赴くことを若い二人が知るや、同行を願い出てくれたのだ…。」
ヨゼフの話に、エディアもジーグも耳を澄ました。まるで出来上がった小説でも読んでいるかのようで、ジーグは半信半疑と言った風であった。
だが、廃墟に赴く迄の路で出会った神父の名を聞くや、ジーグはその表情を変えたのであった。
「ロレンツォ…だと…?」
そのジーグの声に、ヨゼフは語りを中断させた。
神父の名にロレンツォと言うのはあまりいない。それと言うのも、この名前は古宗教の聖人からのものだからである。
「知っているのか?」
ヨゼフが不思議そうにジーグへと問うと、彼はとある男の話をしたのであった。
「数年前の話だ。俺がカトリーヌの墓所へ出向いていた時、一人の神父が馬車に乗せてほしいと頼みに来たことがあった。行く先が王都だってんで、俺はそこまで乗せてくつもりで了承した。まぁ、途中のシュアの村に知人が居るとかで降りちまったが、その神父の名が確かロレンツォと言っていた。」
「奥方の墓所は、聖コロニアス大聖堂にあるのか?」
「そうだ。カトリーヌの出身がカスタスだからな。やはり故郷で眠らせてやりたかったもんで、大聖堂へ許可を願い出たんだ。すんなり許可は下りたがな。まぁ、その話はいいとして、その神父はな、神託でとある土地へ赴くとも言っていた。」
ジーグの言葉に、ヨゼフは悲しげな表情を見せて言葉を返した。
「ジーグ…。そのロレンツォ神父は、廃墟で亡くなったのだ。最後の神託を告げると同時に、まるで神の御手に抱かれるようにして…。」
「そうか…亡くなったのか…。」
その会話の後、ヨゼフはロレンツォの語った神託から入り、廃墟の教会の墓所へ彼を葬ったことを続けて語った。
その後も続けて話していたが、その最中、ヨゼフは何か不思議な縁というものを感じていた。
ヨゼフはジーグと、かなり長い間会ってはいなかったが、この二人が同じ人物に出会い、そして短い旅路ではあったが言葉を交わし行動を共にしていたのである。そして、こうやって二人の旧友は再会し、馬車の中でその人物のことを話すなど…偶然と言うよりは、むしろ必然な
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