花園の章
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あげていた。
「彼は大したものだよ。この暑さで弱音一つ溢さんとは。全く確りしていて、この先の成長が楽しみだ。」
「そうですわねぇ。今度馬車を使う時は、私達も彼を指名したいですわね。」
暑い馬車の中、レヴィン夫妻はワッツを誉めそやした。すると、前座席に座っていたジーグはにこにこと微笑みながら、夫妻へと言ったのであった。
「そうなのだ。彼はそりゃ働き者で、本当に確りした子だ。それに勤勉でなぁ。両親も昔から知っとるが、とても堅実なやつらだ。故に、俺はこの馬車しか使わんのだよ。」
まるで自分の身内でも自慢するかの様な口振りに、夫妻は可笑しくなって笑ってしまったのであった。その笑いに、始めは渋い顔をしていたジーグであったが、直ぐに顔を崩し頭を掻きながら一緒になって笑ったのであった。
暫くは暑さに口を開くことも無くなっていたが、ふとジーグが思い出したかのようにヨゼフに問い掛けた。
「なぁ、ヨゼフ。あの大剣なんだが、一体どんな経緯で預かったんだ?」
ジーグの問い掛けに、夫妻は少々顔を曇らせた。これを語るには一人の女性の死と、国に関わる事件とを語らねばならない。ジーグが口の堅い人物であることを分かってはいたヨゼフは、最初にジーグへこう言ったのであった。
「これはあまりにも大きな話だ。原初の神に誓って他言無用に願いたい。」
「そんなに大それた話しなのか…?それなら、原初の神と全ての聖人にかけて他言はしない。俺も理由を知れば、お前たちの力になれるやも知れんからな。話してくれるか?」
揺れる馬車の中、ヨゼフは腕組みをして黙していた。果たして、この事実を語って本当に良いものであろうかと、自問自答を繰り返していたのである。
仮に、これを知って動いたジーグ等を、ヘルベルトが見逃すだろうか?そう考えると、迂闊に伝えぬ方が良いと言うものであろう。ジーグの身に危険が及べば、息子のコンラートとて危うくなるのは明らかであり、これ以上親しき者を巻き込んではならないと、ヨゼフは悩んでいたのである。
それを見ていたジーグは、彼の考えを見透かしたように口を開いた。
「ヨゼフ。たとえどんな大事でも、俺はどうとでもしてみせる。それだけの資産もコネもある。仮に、この大陸全ての貴族が相手でも、俺はお前たちを見棄てるつもりはね無ぇよ。言ってくれ。」
ジーグは真っ直ぐにヨゼフを見据えて言った。それに付け足すかのように、隣に座っていたエディアが口を開いた。
「あなた…。大切な人を守りたいのは、誰でも同じもの。これはもう、私達の手には負えないもの。国の未来のため、一人でも多くの有力者に味方になって頂けるのなら、それに越したことはないでしょう?」
エディアの言うことは尤もなことである。もし、この大剣が奪われようものなら、この二人では見つけ出すことさえ不可能に近い。それを
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