花園の章
U
[15/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を切らざるを得なかった。いきない馬車が停止してしまったからである。外からはワッツの叫び声が聞こえていた。
「ワッツ、どうしたんだ!何かあったのか!?」
「ジーグさん、大変です!人が血塗れで倒れています!」
「何だと!?」
ワッツの言葉に、先に降りたジーグに続き、レヴィン夫妻も外へと飛び出した。
すると、彼らの目の前には旅人らしき男が二人、血塗れで倒れていたのであった。
エディアは直ぐ様駆け寄り、二人が生きているかを確認したのであった。
「こちらの方は息があります。あなた、止血剤と布を!」
「分かった!ワッツ君、直ぐにでも出発出来る様にしておいてくれ。ジーグ!出口の村に医師は居るか?」
「居る。腕は確かだ。エディアさん、もう一人の方は?」
ジーグはヨゼフと会話した後に、振り返り様にエディアに問い掛けた。しかし、もう一人の男の横に座り確認していたエディアは、ジーグの問いに首を横に振ったのであった。
「この方は、もう息がありません…。残念ですが、そちらの方を優先致しましょう。」
「そうか…。では、彼を医師に診せた後、その方を葬る手配をしよう。心苦しいが、一先ずはその樫の下に横たえて、布を被せておくとしよう。」
「そうですわね…。この馬車では。一人運ぶのが精一杯ですもの…。」
そう言っている間に、ヨゼフは息のある男を止血し、傷口に布をしっかりと巻き付け終わっていた。
そうして後、四人は慌ただしく仕事を済ませると、亡くなった男を樫の木の下へと運び、上を布で覆った。回りには動物の嫌うハーブの粉を撒き、遺体が荒らされぬ様にすると、直ぐ様馬車に乗り込んで出発したのであった。
無論、四人は彼らのことなぞ知らない。四人にとって、それは全く関係せぬことであり、助けられる命を助けると言うだけなのである。
ただ、彼らの傷口は剣によるものであることは、エディアにすら一目で解っていた。そして、それは夫妻が託された剣にも、このプレトリウス王国にも関係があるということも…。
「あなた…助かりますわよね…?」
「エディア…。助けねばならんのだよ…。」
目の前の男は、傷が熱をもっているためか酷く苦しそうにしている。エディアは彼の額から吹き出る汗を拭い、ヨゼフとジーグは、馬車の揺れから男を守ろうとしっかり押さえていた。
「しっかりしろ!お前は生きるんだ!死んではならんぞ!」
ジーグの口から出た言葉は、まるで亡き妻への懺悔にも聞こえたと言う。
五人を乗せた馬車は、ひたすらに山道を駆け抜ける。早く村の医師の元へ行くため、ワッツも出来る限りのことをしていた。揺らさぬ様に焦らず、かといって速度を弱めることなく…。四人は一人の男のために、それぞれの戦いをしているのであった。
しかし、その馬車の走り去る時、四人の誰一人として気付く者はいな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ