花園の章
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先の旅に、白薔薇の幸運がありますように。」
トビーはそう言うと頭を下げ、ついでジーグへももてなしの礼を述べて部屋を出ていったのであった。ワッツも置いて行かれては大変とばかり、ジーグとレヴィン夫妻へ挨拶し、トビーの後を追ったのであった。
「さてと…俺達も休もうや。この歳になると、しっかり眠らんとやってゆけんからな。」
「あらあら…まだそんな歳じゃないでしょうに。」
ジーグの言葉に、エディアは笑いながら言った。隣ではヨゼフも笑っていたが、ふとその顔から笑いが消えた。
「本当に…このまま何も無ければ良いのだがなぁ…。ただ、旅をして音を奏で、そして生活しているだけで充分と言うものだがなぁ…。」
そのヨゼフの言葉に、エディアもジーグも静かになった。
どういう巡り合わせなのか、伝説の兄弟の名を継ぐ夫妻と国の王子が出会い、そして、その王子へと託された一本の大剣。
ただ生活をしていた筈の夫妻へと降りかかった運命の悪戯は、一体何を求めているのか?考えても仕方無いこととは思っていたが、それがふとヨゼフの口から零れてしまったのであった。
「ヨゼフ…今日の煩いは今日のものだ。明日の煩いは明日に任せようではないか。今考えたとこで埒が明かんからな。さ、眠るとしよう。」
「そうだな…。それではエディア、我々も眠るとしようか。」
「そうですわね。それではお休みなさい…良い夢を。」
そうして、三人は床に着いたのであった。外は満天の星空が覆い、中央には少し欠けた月が大地を見下ろしていた。
翌朝、ワッツは夜明けと共に馬車を走らせた。中の三人は外の景色を眺めながら、先日と何の変わりもない旅を楽しんでいた。
「しかし、少し入っただけでこうも山道になってしまうとは…。」
「ほんとに…。随分と遠くへ見えていたと思いましたのに。早くてお昼近くになるのではと…。」
彼らは日が昇る前に、あの宿を発っていた。今走っている路は、緑に囲まれた山道である。
「まぁ、ここは狭いからなぁ。ワッツとは何度も通ってっからこの路を行くが、他の馭者じゃ駄目だな。迂濶に来ちまうと、横の谷底へ落ちちまいそうでよ。」
このジーグの話を聞き、夫妻は顔を蒼冷めさせた。深い木々に囲まれていたため、夫妻は横に谷があることに気付いてなかったのである。
「ジーグ…。向こうから馬車が来るなんてことはあるのか…?」
蒼い顔をしながらヨゼフが問った。その路は、とても馬車が擦れ違うだけの幅は無いように思えたからである。
しかし、ジーグは何ともないと言った風に答えたのであった。
「心配するな。幾つも山の脇を削り、擦れ違えるように広くしてある。尤も、街への本道が出来てからは、使うのは俺位になっちまったがな。先の出口は小さな村になっててよ。そっから入ろうなんざ…」
と、そこでジーグは言葉
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