花園の章
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非お会いしたいと押し掛けました。」
「ま、そんなとこだとは思った。それでは紹介させて頂こうか。こっちが我が旧友のヨゼフであり、そちらが奥方のエディア氏だ。」
ジーグはそう言って夫妻を紹介すると、トビーは静かに立ち上がって自ら名を名乗ったのであった。
「お初にお目に掛かります。私はルーン公アンドレアスが四男、トビー・アーテアス・フォン=プレトリウスと申します。夫妻の高き名声を聞き及び、常々お会いしたいと思っておりました。」
トビーのあまりにも紳士的な態度に、夫妻は目を丸くして慌てて言ったのであった。
「そう畏まらないで頂きたい。ルーン公のご子息であれば、我等は下位にあたります。無礼を承知で申し上げるが、下位の者に、そう容易く頭を垂れてはなりません。」
「お言葉を返すようですが、貴族と言えど才覚は別格と言うもの。私は音楽を愛しております故、貴方に頭を垂れるのは私にとっては自然の理なのです。」
その言葉を聞いた面々は、あまりのことに苦笑せざるを得なかった。
いかな子息とは言え、貴族は貴族である。それはこの国…いや、この世界が出来てから連綿と続く摂理であり、誰しもそれを違えることは出来ぬのである。それを知りながら、この若き貴族はレヴィン夫妻に頭を垂れることが自然の理と言い切ったのである。
「やれやれ…。私達の出会う貴族様は皆、謙虚なお方ばかりだな。」
「そうですわねぇ。尤も、普通はこの様な場所でお会いすることは無いのですけど…。」
夫妻の言葉を聞き、トビーの隣に座っていたワッツが、申し訳なさそうに口を開いた。
「誠に申し訳御座いません。私がうっかり口を滑らせたばかりに…」
「ワッツ、君のせいではない。私が自分で来たいと言ったのだ。誰が君を責められようものか!」
この様な会話が続く最中扉がノックされ、そこから料理が運ばれて来たのであった。
それはトビーとワッツの前へと置かれたが、それを見るやワッツが言った。
「この様な高価なものは頂けません!」
あまりの大きな声にジーグのみならず、レヴィン夫妻にトビー、それに料理を運んで来た従業員すら目を丸くし、そして笑ってしまったのであった。
「いやぁ、もう出来ちまってるんだから、食べてもらわにゃ作った料理人や、食材を作ったもんに申し訳ねぇだろう?遠慮なんてもんはいらねぇよ。」
ジーグは苦笑しながらそうワッツに言った。それを聞くや、エディアもワッツへと言葉を付け足したのであった。
「そうだわ!あなた、折角ですから何か奏しましょうよ。私達は充分頂きましたし、私達がもてなすのは音楽が一番ですもの。」
エディアのこの提案は、ワッツの口を開かせなかった。すぐにヨゼフがそれに賛同し、夫妻が共に席を立ってしまったからである。
こうなってしまうと、もう食べない訳にはゆかなくなったワ
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