花園の章
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緒に、フラーツさんの旧友のレヴィン夫妻がいらっしゃってるよ。僕は未だ夫妻の演奏を聴いてはないけど、フラーツさんはとても誉めてらしたよ?」
「それは本当か!?あのレヴィン家の末裔であるヨゼフ氏がいらしてるのか?奥方のエディア氏も、かなりの腕と聞いている…。よし、ワッツ。フラーツ氏のところへ行くぞ!」
「ええ!?僕も行くのか?」
トビーはワッツの叫びも聞くかず、彼を引きずるように本館へと向かったのであった。
先にも語ったが、ワッツは公私混同を嫌い、それはトビーとてよく知っていた。だが、そんなワッツを揶揄うのが好きなのもトビーであり、何かに巻き込むことも度々あった。それはいわば悪友であり、在りし日のヨゼフとジーグの姿と重なっていた。
さて、ヨゼフ達三人は、今は部屋でのんびりと食事をしていた。
ジーグはこの宿屋だけでなく、各国に店を出している。宿屋と酒屋が中心であり、その全ての店を統括していたのがジーグなのである。そんなジーグがフラリと訪れたものだから、この日宿で働く者達は気が気ではなかったのであった。
「全く、俺が来た位で、そう固くならんでも良かろうに。」
従業員の働きぶりを観察していたようで、ジーグがそうぼやいた。
「ジーグ、それは些か無理な相談と言うものだ。上司どころか、お前は会社の創設者のようなものだ。お前の目が気にならん者など、ここには居なかろうよ。」
「そうねぇ。ジーグさんに何にか言われようものなら、きっと飛び上がってしまいますわねぇ。」
ジーグのぼやきに、夫妻はさも他人事みたいに答えた。
「二人とも…揶揄かってるだろ?」
二人の言葉を聞き、ジーグは半眼になって言った。それを見た夫妻は、さも可笑しそうに笑ったのであった。それにつられ、ジーグも一緒になって笑った。
その時、扉をノックする音が聞こえたため、ジーグは扉へ向かって「入れ。」と一言だけ言った。用のある従業員だと思ったからである。
しかし、そこから現れたのは従業員ではなく、代わりに二人の青年が顔を出したのであった。
「ワッツに…トビー君じゃないか!これは珍しいお客人だな。さぁ二人とも、中へ入った入った!」
ジーグは二人に椅子へ座るように言うと、自身は廊下へと出て従業員を呼んだ。どうやら食事の追加を頼んでいたようである。それが済むと、ジーグは自分の席へと戻たのであった。
「君達、久方ぶりに会って話もあるだろうに、どうしてここへなんぞ来たんだ?」
ジーグは席へ着くと、若き来客二人へと問ってみたのであった。ジーグはこの二人が親友であることを知っており、その上、滅多に本館へ顔を見せないトビーが自ら出向いて来たことに少々驚いていた。トビーはそれに気付き、ジーグにこう言ったのであった。
「実は、先程ワッツに楽士のレヴィン夫妻が訪れていると聞き、是
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