花園の章
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内だけでなく大陸全体を旅したことは、二人にとって大いに役立つことになるのであった。
旅をして後は仕事が忙しくなり、特にジーグは数件の宿屋の経営を任されたため、とても会うことなど出来る状態ではなく、互いに疎遠となって今に至ってしまったのであった。
「今日はこっちに用があってな。いやぁ、良かった。明日にゃ王都へ帰らなきゃならなかったからな。それにしても、夫婦揃って旅とは…。お前は変わらんなぁ。」
「まぁな。そう言うお前は、大いに成功したと聞いてる。残念だが、宿や店の名を聞いてなかったからなぁ…寄ることもなかったがねぇ。」
「わざわざ訪ねんでも、ほれ、こうやって再会出来たじゃないか。そうだった…宿を探してんだろ?ここへ泊まれや。気兼ねは要らねぇしなぁ。」
「済まんなぁ。」
「何言ってる。奥さんもゆっくりしてって下さいよ?」
「ご親切、ありがとうございます。」
ヨゼフとエディアは互いにジーグと握手を交わすと、ジーグは夫妻を店の奥へと案内したのであった。
ジーグを呼んできてくれたあの青年それを見届けるや、再び店内の掃除へと戻っていった。
ヨゼフはその青年が気にかかり、彼のことをジーグへと尋ねてみた。すると、その青年はジーグの息子だと言う。
「いやぁ、俺には勿体ねぇ出来の良い息子さね。」
「奥様はどちらへ?」
ふと、エディアは奥方の姿が見えないことを問ってみた。恐らくは王都の本邸へ居るのだとは思ったのだが、その問いに対し、ジーグはその顔に小さな陰りを落として答えた。
「あぁ…妻のカトリーヌは八年前に病で亡くなっちまったんだ。父も従兄弟のハースもその時、同じ流行り病で一緒に逝っちまった。」
王暦五七一年。その年、この国…いや、この大陸全土でゴドフ病という病が大流行した。
この病はそれまでには無かったもので、リチェッリから爆発的に広がったとされる。その病を途中で食い止めたのがマーティアス・ゴドフ医師で、この医師が五七三年に治療法を発見したため、ゴドフ病と名付けられたのであった。現在では撲滅され、最早過去の病となっている。
「何も知らぬとは言え、こちらの失言だったな…。」
「そうですわね…。ジーグさん、不躾をお許し下さい。」
無論、レヴィン夫妻もゴドフ病の大流行は経験しており、その恐ろしさを知っていた。各地では日々人命が失われ、その度に葬送の音楽を奏で続けていたのである。忘れようにも忘れられぬ記憶であった。
「なに、もう昔の話だ。こんな湿っぽい話なんぞしてりゃ、カトリーヌにどやされちまう。さ、先ずは中へ入ってくれや。」
そう笑顔で言うや、ジーグは夫妻を伴って中へと入って行ったのであった。三人の会話を聞いていたジーグの息子コンラートが、どこか淋しげな笑みを見せていたことには誰も気付かなかった。
「いやはや、こうし
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